611:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/25(火) 07:22:37.51 ID:tPA7g4lio
言葉も出せない様子で頷くと、彼はそのまま身体を動かし、わたしの腕を引きずって、水流から引き離そうとした。
わたしはそれに従って、自分の身体をどうにか持ち上げる。水に濡れた衣服が重く、雨は痛いほど強い。
身体を動かすたびに手足に痛みが走った。打ったのか切ったのか擦ったのか、分からない。
でも、どれにしたって同じことだった。
それはわたしが自分でつけた傷なのだ。
ツキの身体についた傷も、わたしがつけた傷なのだ。
身体を這うように動かす。怒号のような水流のうねりはわずかに遠ざかった。
堤防の上まで辿り着くと、ツキは不格好に立ち上がった。
それからわたしに手をさしのべた。
わたしは少しの間迷っていた。
その手を握る資格が、自分にはないような気がした。
でも、ツキはずっと手を差し出したままだ。
彼が雨に打たれたままなのは、とても、いやだった。
だからわたしはその手を握って、痛みを堪えて、立ち上がった。
彼は苦しげに笑った。
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