622:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/25(火) 07:35:37.88 ID:tPA7g4lio
「さて、それじゃあ行きますか」
ツキはそう言って歩き始めた。
わたしは何も言わずに、彼を追いかけて隣に並ぶ。
ふと後ろを振り返る。そこに誰かがいたような気がした。
でも、誰もいない。ただ歩いてきた道があるだけだった。
誰もいないはずなのに、わたしはそこに彼女が立っているような気がした。
薄いクリーム色の毛並み、綺麗な鳶色の瞳。
それは錯覚なのかもしれない。
その錯覚を、わたしはなんだか心強く感じた。
もう一度前を見たときには、さっきまでより気分が晴れ晴れとしている。
それは身勝手な投影なのかもしれない。
わたしはもう一度、「ありがとう」と口の中だけで呟いた。それで最後にしようと思った。
「それにしても」とツキは空を見上げた。
「いい天気だなあ」
雨に濡れたアスファルトが太陽の光を反射して、まぶしい。
晴れた空の下を歩くのは、ひさしぶりだという気がした。
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