過去ログ - 少女「雨が止んだなら」
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:01:08.68 ID:0FhXK3hqo

 この屋敷に来たのがいつだったか、正確には思い出せない。
 つい最近だという気もするし、ずっと前だという気もする。どうもはっきりしないのだ。
 というよりわたしには、そんなに昔のことがよく思い出せないのだ。

 わたしにあるのは、せいぜい昨日や一昨日や、その程度の分の記憶だけ。
 あとはもう、ずっと同じように生活してきたという印象しかない。

 いずれにせよ確かなのは、わたしがここでするべきことは何ひとつない、ということだ。

 わたしはこの屋敷では好きな時間に寝て、好きな時間に起きる。
 退屈したら地下の書庫に本を取りにいったり、蓄音機で音楽を聴いたりする。
 シラユキが話相手になってくれることもあるし、近くの森の中を散歩することもあった。

 わたしは屋敷の中で一日中過ごし、夜が来たら眠り、朝が来たら目を覚ます。
 ずっとその繰り返しだ。

 用事もないから、屋敷から見下ろすばかりで、丘の下の街にも実際に足を運んだことはない。
 別段、行ってみたいとも思わないのだけれど。
 わたしが街に行くのを、シラユキはどうしてかとても嫌がるから。




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