過去ログ - 【マジェプリ】もしもイズルが一週間いなかったら
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95: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2013/05/26(日) 19:33:21.00 ID:cUmqdaKSO
――心の底から?
その心が本物かも分からないのに?
ふと沸き上がってきた疑念に、手が、足が、体が震え出す。
まるで、どうやって立つのかを知らない生まれたての小鹿のようだ。

我ながら良い例えだ、と自嘲気味に笑いながら、ケイは動揺に震える体とは裏腹に冷静な思考でいた。
私も、そうだ。本当に私は『私』なのか、分からない。生まれたてだ。
以前からずっと持っていた不安が、ここにきて押さえを失い始める。

純粋に怖い。怖くて仕方ない。
自分の心が本物ではないかもしれないなんて。
自分の感情が――想いが、分身の生んだ偽物なのかもしれないなんて。

やはり震えは止まらない。
助けて、と叫びを上げられるなら上げてしまいたい。
だが、誰に? この何も無い自分が誰に助けを求めればいい?

「……ず、る」

舌までまともに動かない状態で、ケイの頭は必死にその名を呼んでいた。
自分の心の拠り所になりつつある、大切な彼の名前を。切実な気持ちを込めて。

「――イズル……っ!」

名を呼ぶ自分の声か、その名前自体か。
或いはその両方に鼓舞されたように、ケイの足は動く。
行き先は、決まっていた。



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