25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/03(月) 05:40:36.23 ID:fUqL3i+K0
やけに人懐っこかった幽霊の姿を思い浮かべる。
さびしんぼう、と言ったっけか。幽霊にしたって、なんだか妙な名前だと思う。
幽霊の名前ってのは普通は生きていたときの名前そのままなんじゃないのか。
そうじゃないなら、口裂け女だとか、ろくろ首なんかとかと同じ、お化けになってからの名前なんだろうけど。
だからって自己紹介するお化けってのは聞いたことがない。
「うーん、それにしたってこんなに真面目に幽霊のことを考えるなんて……
やっぱり疲れてるのか、私は。だったらそっちのほうがヤバイ話だよなぁ」
「おっすおっすばっちし! さびしんぼうじゃ!」
……そんなことを考えていたら、何の前振りもないまま、唐突にさびしんぼうが現れた。
早朝の、他に人もいるバス停に、いきなりピエロ姿の女の子。
周りがざわついてもおかしくないというのに、顔色を変えてさびしんぼうのほうを向いているのはやえだけだった。
「今日もいい天気じゃのう、やえちゃん。こんな日は会社なんかサボってピクニックにでも行かんか?」
「…………」
「でもこれだけ寒いとピクニックよりは室内でゆっくり過ごすほうが気持ちええかのう?」
「………………」
「やーえーちゃーんー? おーい、聞こえんのかー?」
呆気にとられながら、やえはスルーを決行。
さびしんぼうがやたら元気なテンションで喋り出しても周りは誰も気にしていない。というか気づいていない。
どうやらさびしんぼうの姿が他の人に見えないというのは本当のようだ。
だったらここで馬鹿正直にさびしんぼうに付き合ったら、周りから見えるのは虚空に向かって謎の会話を始めるアラサー女子。
駄目だ、そんなことをしてしまえば明日からこのバス停を使えなくなってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。
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