過去ログ - モバP「アイドルたちの奇妙なお話」
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/20(月) 23:46:09.22 ID:I96lWZFz0
「じゃあ久美子。気をつけてな。明日は打ち合わせだから、事務所で」
「はいはい気をつけても何も、もうマンションすぐそこだから。本当心配性なんだから」
「はは、悪い悪い。じゃ、また明日な」
「うん、ありがとうP。また明日ね」
車に揺られて十数分で、久美子の自宅であるワンルームマンションに到着。過保護気味なPに軽く文句を言いながらも、
素直な感謝を表して車を降り、マンションのエントランスへ。
ポストをチェック。新聞などはとっていないので、入っているのは大抵どうでもいい広告の類ばかり。今日もその例に
漏れなかったようで、久美子は面倒くさそうにチラシ専用のゴミ箱にまとめてぽいと投げ捨て……ようとした、その時。
悪寒が走った。
何か、奇妙なものが見えた。どこに、と言えば、そのゴミ箱の上に設置されている大きな鏡に、である。
そこに映ったのは、どうでもいい広告を今まさに捨てようとしている女性。もちろん久美子自身である。
そのはずである。いや、「はず」ではない。久美子以外あり得ない。
現に、今その鏡に映っているその姿は紛れもなく久美子そのものだ。流れるようなブラウンのストレートヘア。きめ細かく
透けるように繊細で瑞々しい肌。シンメトリーの均整の取れた顔立ち。艶のあるふっくらした唇。きれいを求め、きれいを手
に入れた新人アイドル。松山久美子そのものなのだ。ぱっちりとした黒く大きな瞳が、久美子を見返している。久美子の心の
中を表すような、不安に揺れているような瞳。
「……やっぱり、結構疲れてるのかな」
鏡に映る自分を見ながら軽く呟く。鏡の久美子は同じように口を動かし、久美子をシャドーイングする。その様子に
納得したようにため息をつき、久美子は広告をぞんざいに丸めて捨てた。
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