過去ログ - モバP「アイドルたちの奇妙なお話」
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/20(月) 23:47:40.49 ID:I96lWZFz0
「やだ……吹き出物?」
明くる朝。久美子は朝から洗面台を前に鬱鬱としていた。難しい顔で鏡に映る久美子のおでこには、ひとつ大きく赤いできも
のが見える。
日ごろのケアは怠っていないし、それは昨日の夜だって同じことだった。おかげで目立つ肌荒れやできものとは久しく無縁
だったのだが、それゆえに久美子のショックは小さくなかった。
「なんかすごく赤いけど、触った感じ腫れてはいないかぁ。これならまあ誤魔化せるけど……」
なんか変なの。心の中でだけそう付け足した。というのも、鏡の中のおでこにできてしまっている吹き出物は、確かな立体
感を伴っている、ようは腫れて盛り上がっているように久美子には見えていた。しかしそこを触ってみると、特に腫れは
感じない。それに痛みもない。
「まっ、誤魔化すの楽だしいいんだけどね」
結局、深くは考えないことにした。吹き出物ができるのも久しぶりなのだ。痛くない吹き出物だってあるだろう。見た目大きいが、
触ってみると意外にボリュームのない巨乳アイドルだってざらにいる。それと同じなのかもしれないと、やや飛んだ理論で久美子
は自身を納得させる。一応他の鏡でも確認してみたが、当然というべきか、おでこに吹き出物をいただいたアイドルが映るだけだった。
「……カバーする技術も学んでいかなきゃいけないしね」
久美子は前向きな女性である。キレイを売りにする以上肌のトラブルは大きなマイナスだが、上手にカバーしてきれいを
演出できるのならそれもまた、間違いなくきれいへの努力なのだ。久美子はまだまだ若いが、人間は必ず年を取っていく。
誤魔化す、という技術は必ず必要になるものだと、彼女はわかっている。久美子は前向きで、そして現実的な女性だ。
現実的だから、彼女は信じた。今朝のこの肌荒れという変化は、多分に日常的なリアリティを持っていた。いかに人並み
以上のケアをしていようと、何かきっかけがあれば肌荒れくらいはする。私は肌荒れなんてしませんよ! 私はきれいなので!
というような若さゆえの自信をふりかざすほど、久美子は自信過剰ではなかった。
比して昨晩のあの出来事は、あまりに非現実的だった。だから彼女はそれを錯覚や疲れの表出として処理し、もう深く考える
ことはなかった。現実的な変化を前にしては、そんな現実感のない出来事など霞んでしまう。そういうものらしかった。
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