過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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154: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:46:48.13 ID:rM6FpdA8o
淫魔「あのぉ〜……騎士さん。帰る場所、無いって……仰ってましたよね?」

騎士「……ああ」

淫魔「じゃ、私を……色々、見に連れて行ってくださいよ〜」

騎士「えっ……?」

淫魔「私も、ずっとここにいる訳じゃ無いですよね〜?」

騎士「……長くは、もたんな。領主もそろそろ首が寒くなる頃合いだろう。」

領主の暮らしぶりは、目に余る。
演劇の『悪代官』をそのまま写し取ったように、朝から酒を飲み、何も無いと言うのに宴じみた晩餐。
反して領民たちは一日のパンにすら困っているというのに、それらを見ようともしない。
麦の一粒すら取り上げるような圧政を敷き、もはや……『秒読み』だ。
押し固めたその『反動』は、必ず、近い内に跳ねる。

淫魔「お願いします、人間界を案内してください〜」

騎士「考えておくよ。……それにしても勿体ないな、あの男。あそこまで堂に入った腐敗は、むしろ貴重だ」

淫魔「ありがとうございます〜。あ、マントもありがとうございました。これで、よく眠れそうです。大事にしますねぇ」

騎士「いや、粗末にしろ。尻でも拭うがいいさ」

淫魔「え〜? ……それじゃ、おやすみなさい〜。また来てくれると嬉しいです〜」

彼女は、すぐにマントに包まり、再び牢獄の床に寝転がった。
騎士は、あっという間に寝入ってしまった淫魔の寝顔を眺める。
自然と、彼女の頬に指先が伸びた。
触れる寸前に、その指先は引っ込められたが……暖かさは、触れずとも伝わる。

この凍えた暗闇の空間に、彼女は、不自然なほど暖かい生命力を確かに放っていた。


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