過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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32: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/23(木) 00:24:20.58 ID:4RdAMvYao
杖先に生まれた魔力の文字が、魔界騎士へと張り付き、浸透していく。
一文字一文字が魔力を封印する意味を持ち、その身に受ければ『呪文』を奪われる。
人ならぬ魔族に効くかは賭けだったが、それには勝てたようだ。

魔界騎士「ほう。初めて受ける呪文だ」

魔法使い「……あんた、何で避けないのさ?」

身のこなし、素早さ、どれをとっても……彼は、一流のはずだ。
詠唱を待つ事はもちろん、攻撃を避けない。
いや、それどころか――――初めに立っていた場所から、彼は動いてなどいない。

魔界騎士「『避ける城壁』を……見た事があるのか」

次は、大上段の構え。
天に向かって屹立した剣は、全てを見通す戦塔のように、魔の剣とは思えぬほど愚直に伸びた。
戦士は警戒しながらその右手側に立ち、その攻撃に合わせるべく機会を伺う。
がら空きになった腹を攻撃する事は容易い。
だが――――生半な攻撃では、かすり傷すらもつけられないと分かってしまった。

剣が振り下ろされると、その延長線上に無数の握り拳大の光が輝き――――膨れ上がり、連鎖的に爆発する。
その一つ一つが魔法使いの得意とする爆発の呪文、その初等のものと同等の威力がある。
それが――――何百、何千発も弾けながら爆熱の荒波の如くに三人へと押し寄せ、
気付いた時には、閃光と爆風の中に呑み込まれていた。

身を護っていた魔力の防壁は呆気なく砕け散り、爆風に飛ばされ、僧侶と魔法使いは両側の壁に打ち付けられた。
息がつまり、背骨が軋み、強烈な爆音で鼓膜が痺れて、一時、音さえも失ってしまう。
三半規管がかき回され、背に当たったのが果たして床か壁か、果たして天井かさえも掴めない。
魔法使いは床に手をついてがくがくと胃液を吐き出しながら震え、僧侶は、倒れ伏したまま芋虫のように身じろぐ事しかできない。

僧侶「うっ……! あっ……」

魔法使い「なん、で……!?」

最前列で巻き込まれた戦士の体躯が、遅れて、焼け焦げた絨毯の上に無様に墜ちて天井を仰ぐ。
それでも剣と盾は離さないが――――頑強な鎧には、煤がこびりつき、歪んでいた。
一撃で、僧侶の施した『呪文』が吹き飛んでしまったのだ。
防御上昇の祝福は、即死を免れるだけの効果しか示してはくれなかった。

魔界騎士「今のは呪文では無い――――『技』だ。言った筈だ、貴様らの全てを、『無駄』に終わらせてやるとな」


――――――『勝利』が、思い描けない。


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