過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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51: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:26:18.71 ID:zNvxktpKo
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決戦を終えた大広間の大きく重い扉をくぐると、彼らの背後で続けざまに轟音が鳴り響いた。
崩れた天井が瓦礫と化して、大広間を埋め尽くしていく。

役目を終えた『勇者』を独り残した、彼のパーティの最後の戦場を。

魔法使い「……!!」

戦士「振り返るな!」

魔法使い「分かってるわよ!」

涙をマントの縁で拭い、戦士に返しながら走る。
激しく揺れ、砂の楼閣のように崩れていく魔王城の中を、「三人」の英雄達が駆け抜ける。
壁面に飾られた燭台は外れ落ち、魔物を模した彫像は無惨に砕け、鏡とステンドグラスの破片が散乱する。
それは、もはや―――人界を恐怖に陥れた、「魔王」の城とは思えなかった。

僧侶は、走りながらそれらの風景を心に沁みこませるように、見つめていた。
彼女が憶えたのは、安堵でも、達成感でも、ましてや爽快感でもない。
ただ、哀しい。

魔王の力の象徴たる城が崩壊するさまは、ただ不思議なまで、痛々しいほどに哀しく、空しく映った。

旅が、終わる。
世界を救うための旅が終わり、魔王城がなくなり、魔王がいなくなる。
魔王を倒す宿命を負い、戦ってきた「勇者」もまた、いなくなる。
そして三人の『人類』だけが、生きて、残る。

後ろ髪を引かれる思いは、留まるところを知らない。
最後の命令を受け取った今でさえ、勇者の想いを受け止めた今でさえ。
今からでも広間に戻り、彼を連れ帰りたい衝動は、留まらない。


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