過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sagesaga]
2013/05/22(水) 00:08:48.10 ID:GshVNNRdo
皆が寝静まった頃、勇者は火の番をしながら、魔王の城を見ていた。
二つある天幕の内、ひとつは僧侶と魔法使い。もう一つは、戦士と勇者のものだ。
もう少しもすれば、魔法使いと番は交代になる。

勇者「…………旅が、終わるな」

呟いたように……ここで、全てが終わる。
魔王の世界征服の野望も。
恐怖の時代も。
そして――――勇者とその仲間が辿ってきた、救世の旅も。

魔王の城は、禍々しく、しかも寝息を立てるように揺れ動いているようにも見える。
もしもあの城に『生命』が宿っていると言われても、驚く者などいないだろう。
『魔王』の居城に、人間界の貧弱な常識など当てはめようもない。

勇者は、ただ城を見ているのでは、無かった。
見ていればいるだけ――――同時にあちらからも、視線を感じる。
魔王は、見ている。
最後の休息を取る勇者一行を、魔王は間違いなく見ている。

不思議な程に、心は穏やかだった。
在るべき場所へとやって来たかのように、故郷へ戻ったかのように。

『勇者という存在』の故郷であり舞台は、いつの世も、『魔王』の眼前だ。
そこで全てが始まり、全てが終わり、全てが再び動き出す。
数千年に一人の演者のために用意された演壇が、そこにはある。

勇者「……待たせたな。魔王」

魔王が嘲笑するのを、遥か彼方で感じ取り。
その大気の揺れが、伝播したかのように――――勇者の口の端も、緩んだ。


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