過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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87: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/26(日) 02:32:44.05 ID:UMPAG6Zoo
王女「私とて、莫迦ではありません。我が国と隣国の確執は存じ上げます」

この王国と隣国の敵対は、かれこれ三百年ほど遡る。
ある史家は王位継承問題に発端があると言い、別の史家は領土問題だと言う。
はたまた貿易摩擦や、もっと小さな積み重なった問題だとも言うし、もしかすると――――全て、かもしれない。
幾度もの休戦を挟みながら、二つの国は敵対してきた。

王女「相手を『許す』側なのか。それとも、私達が『許しを請う』側なのか。それを分かる方は、いらっしゃいますか?」

見上げる聴衆から、返答は無い。

王女「……私達は、『勇者』と『魔王』ではありません。私達は、人間です。討ち合う宿命になんて……置かれて、いない筈です」

そこまで言うと、民衆からようやく声が上がった。
人々はそちらを見て、やや遠巻きに距離を取った。
歳にして十歳ほどの少年が、握り拳を固めたまま、声の限りに叫んでいた。

少年「そんなの、違う! 僕の父さんは、隣の国の連中に殺された! だから、僕も……殺してやる!

王女「――――あなたの父君は、何をしていらしたのですか?」

少年「兵士だった! 五年前に……戦場に行って、帰って来てない! だから……!」

続きの言葉は、出ない。
少年は哀しみに加え、大声を張り上げた事で紅潮した顔に、じんわりと涙を滲ませた。

王女「……その哀しみは……よく、分かります」

少年「えっ……?」

王女「『たいせつな人』が返ってこない哀しさ、心細さ。……それを、貴方は……その幼さで、知ってしまった」

少年「そうだ、だから……!」


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