過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」
↓
1-
覧
板
20
2
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/05/24(金) 17:05:55.31 ID:raX+wY0oo
予想外の雨だった。
折り畳み傘を忘れたことを悔やみつつ、ハンカチで髪を拭う。
道端のレストランの庇で一息つきながら空模様を見るが、
どうも五分や十分で止みそうにはない勢いだ。
さて、どうするか。仕事の時間は迫っている。
濡れネズミになることを覚悟し会社まで走り切るか、
勿体無いがコンビニにでも駆け込んで傘を買うか。
そう思案し始めたとき、自転車を押しながら青年が近づいてきた。
青年「よかったら、これ」
恵美「え?」
話しかけられる体勢でなかったため、思わず聞き返しながら
辺りを見渡すが、自分とその人以外に人影はない。
青年「いきなり降ったから困ってるんじゃないかと思って」
彼はそう言いながら、広げた傘をこちらに差し出していた。
その表情に悪意や邪気は感じられず、安心させるように微笑んでいた。
見たところ二十歳前後、大学生かフリーターだろうか。
シンプルなTシャツとジーンズだけの服装はおそらく安物ではあったが
手入れはされており、整った顔立ちと合わせて美形と言っても差し支えない風貌だ。
……つまり、どうやら善意で傘を貸してくれる好青年らしい。
恵美「で、でも、いいんですか? だって、私が借りちゃったら……」
彼は予備の傘も鞄も持っておらず、今広げている傘を貸せば濡れるのは相手のほうだった。
申し訳なく思いながら確認の言葉を紡ぐと、
青年「バイト先がすぐそこだから、チャリで飛ばせば二、三分で着くし。置き傘もあるから」
そう言って、それ以上の問答は無用とばかりにまた微笑む。
笑顔に流されるように彼の手から傘を受け取ると、彼は自転車に跨る。
そのまま去ろうとする彼を引き止めるように、急いで礼を言った。
恵美「あの、ありがとうございます。その、何かお礼させてください」
青年「別にいいよ。ボロ傘だし、用が済んだら捨てちゃってもらって構わないから」
恵美「そういうわけには……」
彼の言葉に嘘や誇張は無く、傘はまさしく使い古した安物のビニール傘ではあるが、
物ではなく彼の善意に見合う返礼をしなければ気が済まなかった。
<<前のレス[*]
|
次のレス[#]>>
75Res/78.05 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
板[3]
1-[1]
l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。
過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」 -SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/kako/1369382669/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice