過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/24(金) 17:06:43.07 ID:raX+wY0oo
青年「じゃあこうしよう。俺、すぐそこのマグロナルドに勤めてるから、暇なときに食いに来て」
恵美「すぐそこ……ああ、幡ヶ谷駅前の」
彼が指差す方向にある幡ヶ谷駅の風景を思い出し、
そういえばマグロナルドがあったと納得した。
青年「そ、もし俺がいたらフェア中のポテトこっそり増量サービスするから」
どうもこの人助けは営業も兼ねていたらしい。が、不快ではなかった。
アルバイトにしてこの意識の高さは感心して然るべきだ。
恵美「分かりました。必ず伺います。あの……」
感謝の意を余さず伝えるべく、姿勢を正し彼の目を真っ直ぐに見て、頭を下げた。
恵美「傘、ありがとうございます」
顔を上げると、何を思ったのか彼は横を向き少しだけ口早で、
青年「じゃ、気をつけて」
そう言いながら雨の中に踊り出た。
青年「うおおおおお、つめてっ!」
叫びながら自転車を飛ばす彼の背が見えなくなるまで、私は立ち止まっていた。
……名前を聞いておけば良かったかしら?
そんな益体もないことをつい考えるほど、今のたった数十秒のやり取りは心地良かった。
今夜の夕食は健康のことは忘れて、マグロナルドのセットに決まりだ。
彼の手の温もりがまだ残る傘をさして歩き出す。
雨の勢いは依然強く、傘があっても足元に雨粒が掛かるほどであったが、
会社に向かう足取りは心と同じで軽かった。
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