過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」
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[sage]
2013/05/24(金) 17:08:08.77 ID:raX+wY0oo
梨香の言う、男慣れしていないというのは本当だ。
時折職場の女性陣で雑談するとき、恋愛話で盛り上がることがあるが、
そんなとき私は場の空気に合わせて相槌を打つくらいしかできない。
私の恋愛経験はゼロと言っていい。
それは私の生い立ちに理由がある。
私には二つの名と職業がある。
遊佐恵美、テレアポとして働く一介の契約社員。
そして――エミリア・ユスティーナ。職業は、勇者。
私がこの日本で、遊佐恵美として生活し始めたのは八ヶ月前だ。
それまでは異世界エンテ・イスラで、勇者として戦い続ける毎日だった。
私の父は、私が十二のときに亡くなった。
その数年前からエンテ・イスラを侵略してきた魔王サタンの采配によって、村ごと全滅した。
それまで私も知らなかった事実だが、私は人間である父と天使である母のハーフであり、
魔王を打倒し得る進化聖剣・片翼(ベターハーフ)を扱える唯一の人間として祭り上げられた。
教会は世界を救うため私を育てたが、私は世界などどうでも良かった。
ただ最愛の父の仇である魔王、奴をこの手で倒すことだけを夢見て生きてきた。
教会騎士として戦い年を経て、聖剣と人類最強とまで言われる戦闘力を得た私は、
三人の仲間と共に魔王直属の悪魔大元帥四人のうち三人まで倒し、
魔王城に攻め入ってあと一歩で魔王の首を取れるところまで行った。
が、敗北を悟った奴は異世界へのゲートを開き、残った一人の大元帥と共に逃走したのだ。
ゲートが閉じる前に仲間の一人、ゲート術を操ることができる大神官オルバ・メイヤーと
ゲートに突入したが、一瞬の差で私だけ異世界――この日本へ飛んでしまった。
仲間もおらず、倒すべき魔王の姿もなく、残ったのは
僅かに聖剣を振るうことができる程度の聖法気のみ。
ゲートを開く術は私には使えない。
そして、世界を救う勇者でも衣食住を欠かせば生きてはいけない。
私にできることは、魔王の気配を感じるまで、
日本の仕組みに従って働き日々の糧を得ることだけだった。
***
恵美(……こうして思い返すと、同年代の男との接点って本当にないわね)
十二まで住んでいた村はのどかで人の少ない村だったし、
教会の騎士団は当然男性が多かったが、多くが壮年だった。
共に旅した仲間も、アルバートは私より一回りほど年上だったし、オルバに至っては老人だ。
日本で就職したテレアポの職場は女所帯で、男性はわずかな管理職の中年しかいない。
かくして私は、十七という普通の少女なら恋に恋するはずの年齢にして、
まともな恋愛経験のない仕事一筋の女となったわけだ。
目的があってのことなので後悔はないが、振り返ると少し寂しいかもしれない。
だからだろうか。
まだ名も知らないあの人に会う時間が、こんなにも待ち遠しいのは。
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