過去ログ - 鷺沢文香エッセイ集『本とアイドルと私』
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179:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:18:07.77 ID:e95suTmk0
 これに興味を惹かれた私はそこに佇み、資料や複製された原稿などを暫く見入っていました。


 ...しかし、それ以上に夢中になっていたのが、美優さん。

以下略



180:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:20:51.28 ID:e95suTmk0

 文学サロンを後にすると、周辺にある太宰と地縁のある場所を美優さんに案内してもらいました。

 色々と歩き回り、最後に向かったには武蔵境駅との境にある「陸橋」。

以下略



181:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:22:34.68 ID:e95suTmk0
 未だ当時のまま残っている数少ない建造物。私たちは階段を登り、そこから広がる風景を暫く眺めていました。

 相変わらず空は翳っていますが、西の方では薄くなった雲から黄昏の光が透け、まるで絵画の様な幻想的な情景が作り上げられていました。




182:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:24:53.56 ID:e95suTmk0

「文香ちゃんは、あのあと...『グッド・バイ』の最後は...どうなっていたと思う?」

 電車庫を下にして、面前に拡がるパノラマの開放的な景色に現を抜かしている私に、美優さんが問いかけてきました。

以下略



183:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:29:30.11 ID:e95suTmk0
 どう答えれば良いか思いあぐねましたが、少々思案に更けた後、こう返しました。

 ...恐らく、田島とキヌ子は添い遂げる事は無くても、交わりを持つことになったのではないでしょうか。

 私の思い描いた、陰鬱でありながらも、陳腐で、ロマンチックな結末。
以下略



184:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:31:53.51 ID:e95suTmk0
 それを聞いた美優さんは、柔らかい微笑を目元に浮かべ私を見つめます。

「私も昔、そう思っていたんだけどね...」

 そう切り出すと、一息ついて、美優さんの描く結末を話してくれました。
以下略



185:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:34:02.71 ID:e95suTmk0
 ...大人らしい、成熟したその結論。

 私が辿り着かなかった答えに思わず感じ入っていると、それを察知したかのように、

「なんて...本当はまだわからないんだけどね」
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186:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:37:30.52 ID:e95suTmk0
「だから、色んなところを訪ねているの。何故だか分からないけれど、いつか見つかりそうな気がして...」

 顔を上げると、再び夕陽の透ける空へと目を向けました。その視線はかつて太宰が眺めた景色を探っているかのようで...。




187:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:38:51.22 ID:e95suTmk0
「これまでも...きっとこれからも、ね」

 そう言って瞳を伏せる姿見は、やはり美術館の住人のようで...私の目に焼き付きついて離れることはありませんでした。


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188:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:41:56.75 ID:e95suTmk0

 『グッド・バイ』

 彼が最期に遺した言葉と、それを紡いだ物語はしかし、未だ多くの人の心を離さず、別れることを良しとはしないようです。

以下略



189:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/06/20(木) 22:46:40.97 ID:94flWgSO0


#7は以上です。

次回は、日時は定かでは無いのですが、来週中には更新したいと思いますので、宜しくお願いします。
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