過去ログ - 鷺沢文香エッセイ集『本とアイドルと私』
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83:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 04:19:30.68 ID:PSV1IVwa0
 ...と、途端にノック音。そしてほぼ同時に、

「たっだいまー!!」

と勢いよく開くドア。
以下略



84:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 04:32:31.08 ID:JzXqO43z0
 卓上には4つのカップと、話題のチーズケーキ。控えめな甘さと爽やかな酸味が、コーヒーを一層引き立てます。

 穏やかな時間が流れる中、他愛も無い話で盛り上がりました。

 最近みくちゃんのラジオ番組が凄いらしい、などと話しているときです。
以下略



85:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 04:37:47.97 ID:JzXqO43z0
 そこにあるのは、実家から持ってきた短波ラジオ。

 父の青春時代の相棒だった品で、今のものの倍以上の大きさがあります。

 「たまにはラジオでも聴け」と言われ持たされたんでしたっけ。
以下略



86:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 04:40:41.49 ID:JzXqO43z0
 手元に引寄せ電源を付け、膨大な周波数からチャンネルを合わせます。

 プツプツとノイズが途切れる音をかいくぐり、海外の音楽番組が掛かりました。

 DJの軽快なトークと共に、異国の音楽が次々と流れて来ます。
以下略



87:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 04:48:23.27 ID:JzXqO43z0
 すると、耳慣れた曲が聞こえてきました。

 バングルスの『胸いっぱいの愛』。

 音楽の好きな母が、カーステレオでいつもかけていた曲。
以下略



88:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 04:58:27.71 ID:JzXqO43z0
 思わぬ選曲に聴き入りながら、何気なしにこの巧緻な邦題を心の中で反復してみました。

 『胸いっぱいの愛』...『むねいっぱいのあい』...『胸一杯の愛』...


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89:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 05:02:48.21 ID:JzXqO43z0
 私は頓悟したかのように、手元のコーヒーカップに視線を落とします。

 次いであいさんを見やりました。先程の会話が再生されます。

 そして友紀さんと響子ちゃん。大切な二人。一緒にいる時間はまるで家族のようで...。
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90:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 05:04:59.69 ID:JzXqO43z0


 ...あぁ、そうか。

 あの子はこれを私に運んで来てくれたんだ。
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91:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 05:08:39.66 ID:JzXqO43z0
 そう気付いた途端、ちょっと笑ってしまいました。

 私の様子を、不思議そうに眺める三人。


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92:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 05:13:09.19 ID:JzXqO43z0

 夕食を終えてから一人、もう一度コーヒーを淹れてみました。

 ...インスタントよりは美味しいですが、あいさんが淹れたものには遠く及びません。

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93:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/05/31(金) 05:18:30.10 ID:JzXqO43z0
 覗いて見ると、そこにはやはり昼間のお客さんが座っていました。


 猫は私と、私のマグカップを見ると満足そうに

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