892:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/28(日) 21:53:10.45 ID:EH7umyHRo
彼女がそこで取り出したのは、地引網である。どうやらこれで遷宮寺さんを引っ掛けた様子だ。
「基本、漁業スタイルなのね……」
「魚は貴重、素材も貴重、人材も貴重。つまり、漁業最高……!」
「地味にドヤ顔しないでちょうだい! で……、遷宮寺さん、本当に良いの? こんな出来損ないの部で」
「あ、あの、その……今日は見学に来ただけで……」
「見学?」
彼女はこくりと頷いた。見学に、と彼女は言ったが、羽川さんはどういうつもりで彼女を連れて来たのだろう。
そもそも、部活動らしい事をまだ一度しか行っておらず、何より部員が足りない為、正式に部活動としてはまだ認められていない。
なのに、活動を見学って随分難しいことではないだろうか、と私が悩んでる最中も、
羽川さんは遷宮寺さんをダーツボードの前に立たせ、妙な事を彼女に尋ねていた。
「このボード……かなり旧式のタイプだけれど、尤もポピュラーな形だったもの。……貴女には、これが何に見える?」
「何に、ですか……。ええと、例えるなら……渦潮ですね」
「……合格」
「あのさぁ羽川さん。……なんでそれで遷宮寺さんは合格なのよ」
「彼女にも、素質がある……。私の思惑通りなら、きっと……」
羽川さんはそう言って、遷宮寺さんにダーツを持たせるのである。
そして、ボードに向けて数回投擲して欲しいと彼女が言うと、遷宮寺さんはおろおろとした様子で、彼女に従った。
こうして私は知る事になる、遷宮寺さんの素質というものを。
「こ、これが、彼女の素質……>>893!?」
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