過去ログ - むりやり小説ゲーム 二番館
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957:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/04(日) 21:52:39.23 ID:pMXqW5UWo
誰もが、ダーツには見向きしなかった。以前より有名になったとはいえ、この時はまだ子供には受け容れられていなかったのだ。
しかし、とある子供が俺に興味を示し、そして……俺が、その娘に恋の矢を突き刺すことをしたんだ。

具体的にどうしたんだろう、記憶が曖昧で思い出せない。
ただ、その娘は常に呆然として俺のことを眺めていたようにしか思えないが、その娘と時折ダーツで競ったのは覚えている。

そう、俺はその娘に一度も負けなかった。圧勝しかしなかった。だが、どうしてそんな記憶が突然頭の中に……と、我に返る。
既にプラスチック製の安物ダーツを俺の眼前から退けていた羽川は、ふと、こう漏らした。

「……恋の矢」

「……そ、それって……まさか……!!」

「あの当時の貴方は、常に私をこてんぱんにしては、レイプしていた。……非道そのものだった。
 初心者の私に、貴方は常に貫禄を見せ続け、手を緩めることを知らなかった」

「い、いや、だからって……。……あの時の娘がお前だとは思わなかったぞ……」

「だって、追い掛けて来たから。私には貴方の力が必要だった。だけど、今ではもう牙の抜けた虎そのもの。
 腑抜けて、ダーツの腕も落ちて、以前のような貴方の面影は一切無い……」

「腑抜けた、か……」

「どうして、ダーツを諦めたの? どうして、そんなに……落ち零れてしまったの?」

諦めたのは正しい。だが、落ち零れるつもりは一切無かった。ただ、無理だった。
祖父が他界し、それでもダーツを続けていた俺に試練が訪れることになる。

大会に出てはどうかと、俺は最年少でとある大会に出ることになった。クリケットだろうが、ゼロワンだろうが、負け知らずの俺は勝ち上がる。
しかし、その場には数万という観衆が居た。ダーツ人気に更に火が灯った頃合でもあった。

ダーツは技術的な面よりも、精神的な面のほうが結果として左右される。一度手元が滑ると、二度、三度と続くもの。
それまで、手を滑らせることは無かった俺は、その数万の観衆に呑み込まれる事になる。

それからは散々だった。何をしても思うように飛ばせない。ただ、一人だけの空間で無心になれた時、かつての自分を取り戻せる。

「……さぁな」

羽川の問いに、俺はそう答えるしかなかったのだ。すると羽川は唇を噛み締めるようにしては、俺を睨む。

「……私は、絶対に貴方を昔のように変えてみせる。そうじゃないと、私……>>958


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