過去ログ - 【安価】エレン「オレが最強の兵士に?」アルミン「家族になりたい」3【育成】
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937:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/30(木) 05:27:31.81 ID:+HT0fDRq0
大東亜共和国の中ではトップクラスの歴史と偏差値を誇る、大東亜国民であるなら知らないものはいない有名な学校であり、初等部から大学部までの一貫教育を行っている共学校である。
初等部から大学部までをずっと帝東学院で過ごす生徒もいるが、中等部・高等部・大学部から推薦入試や一般入試を経て入学する者も少なくない。
初等部からの生徒には、政治家の子息息女や経営する会社の跡取や社長令嬢などの比較的裕福な家の子どもや、“帝東学院出身”という肩書を与えたいと願う親にわけがわからないままお受験をさせられた子どもが多い。
一方中等部からの生徒は、難関と言われる通常入試を勝ち抜いての入学を果たすため学力が総じて高い。
同時に部活動が盛んなため、通常入試で合格するには学力が及ばなくとも、何らかの特技を活かして一芸入試で合格して入学する者も多い。
つまり帝東学院とは、家柄、学力、スポーツなど、何か1つは秀でているものを持つ者たちが集う場所である。

そのような学校ではあるが、朝登校して授業を受け、授業の後に部活動を行う――このサイクルは他の学校と大差ない。
財前永佳(帝東学院中等部三年A組女子六番)も6時間の授業を終えた後は部活動のために美術室へ向かい、キャンパスと油絵用の画材を用意し、前方に置いた果物たちを描くことに没頭していた。
美術が好きかと言われれば、普通、としか言えない。
中等部に上がった時、あまり人と関わらずに時間を忘れて取り組めることがしたいと思い、それが叶うだろうと最初に思いついたのが美術部だった、というだけだ。
人と関わることが嫌いというわけではないのだが、初等部の後半から中学1年生の頃にかけてはとある事情で女子の中で浮いた存在になっており、そんな中で例えばバレーボールやバスケットボールのようなチームプレイができるとは思えなかった。
もっとも、ほとんどが全国クラスである帝東学院の運動部で活躍できるような能力が自分にはないことは自覚しているのだが。

どれくらい時間が経っただろうか。
一応満足できる絵が完成して我に返ると、いつの間にか日は傾き、赤い日差しが永佳を背中から照らしていた。
時計に目を遣ると、長針と短針が真反対を指して午後6時を示そうとしていた。

今日も、あと6時間…か。

ちらり、と美術室の端に置いている鞄に目を遣った。
教科書類はほとんど教室に備え付けられた個人ロッカーに置きっ放しにしているので1,2冊程しか入っておらず、いつもはぺちゃんこに近いのだが、今日はいつもより少し膨らんでいる。
いつもは入れていない“ある物”が入っているのだ。

…多分、無駄になるんだろうな。
しょうがないか、タイミング逃しまくったし、もうすぐ下校時刻だし…
…大体、キャラじゃないよね、そんなの。

小さく溜息を吐く。
“しょうがない”という言葉で色々な理由を作ってやるべきことから逃げる悪い癖。
治るどころか年々捻くれて助長されていくこの癖を持つ自分が、永佳は嫌いだった。

「ひーさかちゃんっ」

心の中に渦巻き始めていた黒い靄を優しく包み消していくような柔らかく温かい声が永佳の名前を呼び、永佳は顔を上げた。
きっちりと着こなした制服、胸元まで伸びた艶やかな黒髪、小さな口とすっと通った鼻筋、大きく優しい瞳――クラスメイトでもあり部活仲間でもある上野原咲良(同・女子二番)がにっこりと笑みを浮かべて永佳を見下ろしていた。
初等部の頃から類い稀なる愛らしい容姿をしていた咲良は、今や中等部どころか高等部にまでファンクラブができている程異性からの人気が高く、帝東学院のマドンナと称されているのだが、当人は自分の人気の高さを自覚していない。

「ねえ永佳ちゃん、テニスコート行かない?
 さっき家庭科部にちょっとお邪魔して、マドレーヌ作ったの。
 帰りがてら、差し入れに行こうと思うんだけど」

「…行かない。
 咲良が1人で行ったらいいじゃない」

「そんなこと言わないで、お願い、ね?
 みんなで外で食べようよ。
 さっき華那ちゃんも食べてくれて、美味しいって言ってくれたから味は大丈夫!」

“華那ちゃん”――クラスメイトの佐伯華那(女子七番)は確か家庭科部に所属していたと記憶しているので、華那に頼んでお邪魔させてもらったのだろう。
のんびり屋でぼーっとしている印象しかない華那のことだ、何も深く考えることなしに咲良のお願いを受け入れたのだろう。

「…わかった、片付けるから待ってて」

永佳は諦めて画材を片付け始めた。
クラス内で一緒にいることはあまりないのだが、部活で付き合いを始めてから丸2年を超えたので、咲良のお願い事はやんわりとしているようで有無を言わせないところがあるためにどうせ断ることはできないことがわかっている。
それなら、早々に折れた方が時間を浪費せずに済むという話だ。
それに、咲良が永佳を誘う理由はわかっている。
ストレートに言えば永佳が意地になって拒否することを咲良もこれまでの付き合いで知っているから、わざわざお菓子を焼いて自分の用事を作りそれに永佳を連れて行く、という状況を作ったのだ。


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