過去ログ - 【安価】エレン「オレが最強の兵士に?」アルミン「家族になりたい」3【育成】
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966:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/30(木) 05:53:21.06 ID:+HT0fDRq0
「真子、立て、逃げるぞッ!!」

せめて真子だけでも、ここで死なせるわけにはいかない。
リーダーである真子の死は自らの死に直結するのはもちろんだが、仲間をこれ以上失いたくなかったのだ。

華那がいない、悠希がいない。
鼻の奥がツンと痛み、視界が潤む。
口許に込めた力を僅かでも抜けば、嗚咽が漏れてしまいそうだった。
しかし、今は泣いている場合ではないと、手の甲で強引に涙を拭った。

クリアになった視界に入った真子は、泣き腫らしたくりくりとしている大きな目を見開き、龍輝を――いや、その後ろを指差し、慟哭したせいで若干枯れた声で「川原くんッ!!」と叫んだ。
龍輝は真子の指先を視線で追い、肩越しに振り返り――目を見開いた。
倒したはずの賢吾が既に立ち上がっており、刀を振り被っていた。

次の瞬間、龍輝の背中に鋭い痛みが走った。
右肩から左脇腹に掛け、背中を大きく切り裂かれ、龍輝はその場に倒れ込んだ。
起き上がろうとするが、動こうとする度に背中の傷が悲鳴を上げ、腕に力が入らない――これは、非常にまずい。

「や…めて…ぇ…ッ!!
 さ…榊原くん……川原くんを…助けて…ッ!!」

真子の震える声。
龍輝は首を動かし、真子を視界に入れた。
悠希の亡骸を抱えたままの真子は、ぼろぼろと涙を零しながら身体をガタガタと震わせて、誰が見ても一目でわかるような怯えた瞳で賢吾を見上げていた。
もしも龍輝が賢吾だったとしたら、こんな真子の様子を目の当たりにしたら、とてもこれ以上誰も傷付けようだなんて思えない(端から思ってないけどさ)。
もしかしたら、賢吾も――そんな淡い期待を抱かずにはいられない。

「…悪い……けど、それは、聞けない」

賢吾の低い声が降ってきた。
この、人でなしが。

「真子!!!
 俺はいい、いいから、お前だけでも逃げ――」

龍輝の言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
ざくっ、という野菜を包丁で切るような小気味よい音が、耳から或いは骨を伝わって聞こえたような気がして、一瞬首の後ろ側がかあっと熱くなるような感覚に襲われた。
それが、龍輝の最後の知覚となった。



ぼんやりとした視界。
うっすらと漂う、生臭い鉄のような臭い。
遠くに聞こえる、誰かの泣き声。
そして、ぼんやりとしたそれらの感覚とは違ってはっきりと感じる、腹部の痛み。

…そ…っか…かな…刺されたんだ……

鉛のように重い腕を動かし、精一杯の力を込めて、上半身を起こした。
それは数センチに留まったのだが、先程より僅かにクリアになった視界に飛び込んできた光景に、華那は目を見開いた。


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