11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 01:16:50.02 ID:n4iG8r1+0
事務所に連絡してしばらくすると、まゆのお見舞いに数人の先輩のアイドル達が1人1人来てくれた。
先輩だけじゃなくて、まゆの後に入った後輩の子も。
みんな優しくて、ありがとうという気持ちよりも申し訳無いっていう気持ちが勝る。
勿論、お見舞いの品は無かったけれど、そんなのがあったらもっと申し訳無い。
今は感謝でしかお返しはできないけれど、今度まゆが作ったお菓子をみんなに配ろうかなと思う。
……みんなのおかげで寂しさは少し紛らわせれたかもしれないけど、根本的な解決にはなってなかった。
あの人に来て欲しい。
それはただの願望で、何度も思っているただの我侭。
唯でさえいつも仕事で忙しそうにしているのに、わざわざまゆの所になんて来れるはずがない。
そう思い続けて、日が暮れる。
体調も大分良くなってきて、料理ぐらいならしても大丈夫かなと思い台所へ向かおうとしたら、玄関から扉を叩く音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう。
まさか、と思うけれどそんなはずはない。
あの人はこの時間でもいつも仕事をしているぐらい忙しいはずだから、そんなはずはない。
……だけど、期待してしまうまゆがそこに居た。そんなまさか。
ゆっくりと玄関へ歩いて、扉を開ける。
「……あっ、起きてて大丈夫?」
「は、はい。大丈夫ですよぉ、大分よくなりましたから……」
まさかの、それ。まゆがこの日ずっとお見舞いに来て欲しいと思っていたあの人が、居た。
携帯のボタンを押そうとしている瞬間で止まってて、神妙そうな顔からまゆを見た瞬間に笑顔になってて。
「部屋の前に来てから、無理に起こすより携帯で言った方がいいかなとか思ったんだけど、大丈夫ならいいか」
「はい、明日にはちゃんとお仕事できそうですよぉ」
「そうか……良かった良かった。じゃあ、これ、俺のお見舞いの品。つまらない物かもしれないけど……」
彼がカバンから綺麗な包装紙で飾られた箱を渡してくれた。
これは何だろう。
「それじゃまたね、まゆちゃん。女子寮だから許可とって入っても早く出ないと、俺怒られちゃうからさ……」
そうやって頭を掻いて苦笑している彼から目線を外すと、なるほど確かに。先輩アイドルの睨みが利いている。
まゆは全然大丈夫だけど彼が大丈夫じゃないので、名残惜しいけれど彼を見送る。
駆け足で去っていく彼が転びそうになったところで、思わず笑ってしまう。
……気がつくと、1人の寂しさは十分に消えていた。
あの人からの贈り物。
包装紙を丁寧に取ると、お洒落な箱。
開けると中にはかわいいピンク色のタオルが入っていた。
思わず、声が出た。
つまらない物なんてとんでもない、あの人からの物ってだけでまゆにとっての価値はとても高いのに――
それから、まゆが仕事やお出かけする時に手放せない物が、1つ増えた。
そういえば、パジャマ姿のままだった。
……今更なのに、恥ずかしい。
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