19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/03(月) 03:07:30.50 ID:YCXt54HD0
寮に戻って、ちょっとだけお化粧して。
服もお気に入りの、自分でも着こなせてると思う服を着て。
荷物もしっかりと持って、忘れ物はない。
……準備万端だけど、時間にはまだある。
なのに待ちきれなくて、1時間も早く来てしまったのは自分自身でもどうなのかと。
それほど待ちきれないのだから、仕方ない……っていうのは苦しい言い訳。
けれど、呼ばれたことにすごくドキドキしてて、待ちきれないっていうのは本当の事。
何があるのか分からない見えない道を探るような感じ。けれど、何か良いことがあるという確信。
その良いことに期待してしまって……湿気が高くてじめじめしてるけれど、気にはならなかった。
携帯の時計を見ると8時。あの人が私服でやってきた。そういえば、私服姿は今まで見たことなかったかなと。
凡庸な服装かもしれないけど、まゆから見たら真面目そうなスーツと違ってワイルドな感じがして素敵。
「待たせちゃった? ごめんね、まゆちゃん」
「そんなことないですよ」
待たせちゃったのではなくまゆが早く来ただけ、それだけである。
彼だって30分も予定の時間より早く来てるから五十歩百歩だろうか。
それでも彼は申し訳無さそうに、癖である頭を掻く行為と同時に謝った。
彼はまゆを車に誘導する。どこに行くのだろう。
乗るのは助手席にしようかとしたけど、彼の隣だなんて今のまゆじゃ耐えられないかもしれない。
必死で隠してるけど、ずっとずっとドキドキしている。
初めて会った時よりもずっと……
結局、まゆは後ろの座席に座って彼が運転の準備をするのをじっと待つ。
車が動き出して、ラジオが流れるかと思ったら流れるのはまゆが歌った曲。
「これ、まゆのですか?」
「うん、いつも聴いてるからさ」
……どうしてこう、彼はまゆが嬉しくなるような言葉を言ってくれるんだろうか。
「まゆちゃんの歌、俺、好きだよ」
じゃあ、まゆのことはどうなんですか?
なんて聞けない自分自身に嫌気が差す。ここまで好きなのに、いざ彼に答えを聞こうとするといつもこうだ。
それはやっぱり、怖いからなんだろう。
弁当渡したりとかはできるのに、一言言うだけのことができない。
……なんて、もどかしいんだろう。
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