35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 23:50:41.56 ID:XBBjnagi0
それから、しばらくして。
今日は彼とまゆは休みの日で、2人でこっそり出かけている。
事務所のみんなには内緒のまま、最初の時とは違う意味のドキドキの日々が続く。
彼に好意を抱いてた子は……彼自ら話し合って分かってもらえたようで。
諦めた表情で、けれども彼が好きな人を応援するってのを聞いた時は、ごめんなさいと思う気持ちと同時に優越感もあった。
後者の方が強かったのは、まゆが悪い子だからだろう。
そんな悪い子の口を塞ぐ、彼の唇。
前の約束通りの、長いキス。
目を閉じるとよりそれを感じることができて、体が中に浮くような錯覚を覚える。
終わった時の名残惜しさは仕方ない。
「……ファンに見られたら大変な事になるかもね」
「だから、大丈夫な場所にしてるんですよね?」
周囲は自然が多く都会に近いとは思えない、小さな山の展望台。
町を見下ろすかのような景色の綺麗さと、尚且つ秋で涼しくなってきた時期だから吹き抜ける風が気持ちよく、居心地がいい。
勿論、彼とまゆ以外の人は居ない。
まゆの事を分かってくれる彼以外の人は――
「まぁね……都会だって、こういうところもあるから。いいでしょ?」
「素敵ですねぇ……」
「俺はまゆちゃんの方が素敵に思えるかな。なんてな……」
訂正。彼はまだ、ちょっとだけ分かってない。
今日こそはと思って今までずっと言ってなかったけど、言うしかなかった。
「今更ちゃん付け……いじわる、ですか?」
気づいたような顔で、苦笑すると同時に頭を掻く。困った感じになるといっつもこれなんだから。
「あはは、ごめんごめん」
吹き抜け続ける風が彼の髪を揺らす。
そこで一呼吸置いて、彼の満面の笑みが目の前に広がった。
「まゆ、これからもよろしくな。……愛してるよ」
「うふふ、まゆも愛してますよ」
相思相愛の誓い。
それはまるで呪いのようで、永遠に2人を離れさせないように縛り付ける。
そうだったらいいなって思って。
「まゆのことを、幸せにしてくださいね」
幸せ一色の未来を幻視して……まゆは、いつもより強く彼を抱きしめた。
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