過去ログ - モバP「ありすって名前、可愛いね」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/31(金) 09:25:34.21 ID:n/17hADMo
「僕が今日から君のプロデュースをする事になった○○○だ。よろしくね」
私は目の前に差し出された、その手を見つめる。その手は大きくてゴツゴツとしている。
私は少し躊躇いながらも手を差し出した。プロデューサーは私の手を、両手で包み込むように握り返した。ニコニコと子供みたいに目を輝かせて私を見つめている。
きっと私の自己紹介を待っているのだろう。私は、重たい口を開いた。
「橘・・・橘ありすです。橘と呼んで下さい」
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2013/05/31(金) 09:26:40.42 ID:n/17hADMo
「橘ありすちゃんかぁ。ありすちゃん、じゃ駄目かなぁ?」
プロデューサーは人が良さそうな笑顔を浮かべながら、不快な事を口にした。
「橘と呼んで下さい」
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2013/05/31(金) 09:27:15.74 ID:n/17hADMo
「私も、ごめんなさい。別に怒るほどの事でもないのに」
「あり・・・下の名前は好きじゃないの?」
「はい、だって日本人らしくないですから。恥ずかしいです、嫌いです」
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2013/05/31(金) 09:27:50.41 ID:n/17hADMo
まだ少ししか喋ってないが、このプロデューサーは、人との距離をとにかく詰めようとして来るタイプなんだと思った。
私とは逆に、他人との距離を無くす事で安心を得るのだろう。
「他人事だからそう言えるんです。プロデューサーだって、光宙なんて名前をつけられたら嫌でしょう?」
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2013/05/31(金) 09:31:22.11 ID:n/17hADMo
*******
玄関の中に入ると、台所の方から一定のリズムが聞こえて来た。
多分、ママが野菜を千切りしているのだろう。
靴を整理してから奥の方に歩いて行く。出来るだけ包丁の音に、足音を合わせるように歩いた。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 09:32:00.83 ID:n/17hADMo
ママは手を止めて、私に言う。
「おかえりなさい、ありす」
そして野菜を切り始めた。けれどすぐに何かを思い出したように、再び手を止める。
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2013/05/31(金) 09:32:39.39 ID:n/17hADMo
ママは何だかやけに機嫌が良い気がする。だっていつもよりもニコニコしている。
「何か良い事あったの?」
「どうして?」
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2013/05/31(金) 09:34:50.18 ID:n/17hADMo
**********
冬の朝は好きだ。寒いのは嫌だけれども、冬の朝の凛とした空気が好きなのだ。
夏の空気なんかは大嫌いだ。
何だか自分の輪郭がぼんやりと溶けているように感じる。物と物との距離感が曖昧になる。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 09:35:19.39 ID:n/17hADMo
広い座席を私一人で使っていると、何だか贅沢な気分になる。
まるで私を迎えに、電車が走ってきたようだ。
そのまま数分間、電車に揺られて事務所の近くの駅までやって来た。
駅から数分間歩くと、大きなビルに挟まれた、大きくもなく小さくもない事務所に辿り着く。
事務所の中に入ると、部屋の中は暖かな空気が充満していた。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:36:26.12 ID:n/17hADMo
プロデューサーはこちらに気づいて振り向き、柔らかく笑う。
「おお、おはよう橘ちゃん。早いじゃないか」
「プロデューサーこそ早いですね」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:37:43.85 ID:n/17hADMo
特に理由は無いというのは嘘だ。本当は今日が楽しみで早く起きてしまった。実はアイドルになれたのは、とても嬉しいのだ。
理由は決してプロデューサーやママには言えない。なぜなら私は学校に行かないで済むのが嬉しかったからだ。
アイドルとして忙しくなればなるほど、学校に行かないで済む。
そう思うと、早くアイドルとして売れたいと強く思う。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:38:13.64 ID:n/17hADMo
というよりも、子供達が嫌いだ。
まあ、私も子供なんだけど。
学校の皆は、無神経で自分勝手で大嫌いだ。人を傷つけるような事を簡単にする。
きっと皆は馬鹿なのだ、人の痛みが分からないほどに。でないとあんな事はしないはずだ、できないはずだ。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:38:48.11 ID:n/17hADMo
「仕事は良いんですか?」
「大丈夫、それよりも美少女とお話しがしたいんだ」
「・・・ロリコンなんですか?」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:39:26.01 ID:n/17hADMo
「昨日言いました」
「いやぁ、それにしても嫌い過ぎかなって。他に理由があるのかなと思ったんだけど」
「昨日言いました!」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 09:39:51.32 ID:n/17hADMo
「いや、僕の方こそごめんな。・・・しつこいようだけどさ」
まだ、この人は何かを言おうとするのか。
私はプロデューサーを睨む。
けれど、プロデューサーは少しも動じずに話し続ける。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:46:58.25 ID:n/17hADMo
********
「なあ、橘ちゃん」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:47:29.42 ID:n/17hADMo
「私の事を話せって急に言われても・・・何を言えば言いのか」
「じゃあ自分の名前を毛嫌いしてる理由を」
プロデューサーを睨んでみたが、悪びれる様子は少しも無い。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:48:12.43 ID:n/17hADMo
「コンビニに寄っていい?」
「もう三度も寄り道をしてるじゃないですか」
事務所からもう、三種類ものコンビニに立ち寄っている。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:48:45.64 ID:n/17hADMo
結局その後、二回コンビニに寄る事になった。
遅くなったから送って行こうとプロデューサーが言い出したのにその結果、余計に遅くなってしまった。
家の前で車から降りた時に、その事について文句を言うと。
「ごめんごめん」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:50:14.83 ID:n/17hADMo
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目覚ましがなっている、起きなくてはいけない。
しかし今日は一週間ぶりの学校だ。それを考えると布団から出たくなくなる。
そう思ってグズグズとしていると、ママが部屋に入ってきた。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 09:50:42.80 ID:n/17hADMo
「なんでもない、少し眠たかっただけ」
そう言って、布団から出た。
「そう」
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