25: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/05/31(金) 13:32:33.60 ID:suZF7Yji0
【肇ちゃんとお茶で一息】
今日は藤原肇と事務所でひといきついていた。
社長は仕事で外に、ちひろさんは事務用品の買い出しへ。
そんなわけで、せいぜい30分程度だろうけれど、ふたりっきりだ。
ああ、と言っても、彼女は魅力的だが、そういう関係への意識があるわけではない。
純粋に、彼女とのこのひとときを大切にしている、というべきだろう。
肇は熱心に他プロダクションの所属アイドルのコラム記事を読んで唸っていた。
己を形成する為に、他の意見も参考にしなければ、とも語っていた。
そんな彼女だが、そろそろ休憩してもいいだろう。
「肇。そろそろ、休憩しよう。今日は俺がお茶いれるからさ」
『わかりました、ありがとうございます』
手早く熱いお茶をいれたためか、少し香りが飛んでいる気がする。なんだか申し訳ない。
それを簡潔に述べ、ごめんと謝ると、いいえとフォローをしてくれた。
さらに美味しいですよ、とまで言ってくれたのだ。
「俺も、もう少し美味しくいれられるようにならないとな」
『ふふっ…十分、美味しいですよ』
『誰かの為に、といれていただいたお茶が、美味しくないわけはありません』
「………」
『………』
『ああ、ええと…その。お茶、のみますか?次は、私がいれますから』
なんだか慌てたようすがおかしくて、少しだけ笑って手渡した。
正直に言うと、自分のお茶より肇のお茶が飲みたい。
それを態度で表していたようにも思う。
『どうぞ』
ことりと置かれるカップの中の香ばしさに鼻をくすぐられた。
ああ、いい香りだ。心も落ち着くし、飲むのには最適な温度だ。
以前に買い込んでおいた私的なお茶菓子を取り出し、袋を開けた。
『…いいんですか?』
「ああ」
「お礼という名目でさ。少しだけ、付き合ってくれ」
『わかりました』
また、彼女は微かに笑って、まったりとした時間が過ぎてゆく。
いつまでもこの時間が続けば、と思うが、終わりはある。
時間が動き出し、事務所ににぎやかさが舞い戻る。
「さて…そろそろ、休憩は終わりだな」
『ええ。今日も、頑張りましょう』
絶妙な距離感の中、にぎやかさの中に挨拶を残し、そこを出た。
移動手段は東京には星の数ほどあったのに、歩いていた。
肩が触れるか触れないか、その距離の中で笑った。
まだまだ、休憩は続きそうだ。
おわり
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