47: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/05/31(金) 14:21:21.82 ID:suZF7Yji0
【まゆが双子だった】
佐久間まゆが双子であると知ったのは、ここ数日のことだ。
言いにくそうにしている彼女を諭し、真実を聞き出した。
その結果得た情報というのが、このまゆが双子だったということだ。
驚いたりもしたが、彼女…佐久間まゆが佐久間まゆであることに変わりない。
「まゆの双子の姉か妹か…どっちか分からないけど、どこに住んでるんだ?」
『そうですねぇ。いつも一緒に居ますよ』
「へえ。仲がいいんだな。俺には兄妹が居ないからさ、羨ましいよ」
佐久間まゆは今、対面に座っている。
3時のおやつの羊羹が彼女の皿の上に1つ、俺に2つ。
彼女が言うには、甘いモノを食べ過ぎるのはよくないから、だそうだ。
おやつを終え、レッスンに向かったまゆを送り、俺は事務所に戻って、みなに尋ねた。
それはもちろん、佐久間まゆが双子であるということの確認である。
彼女は嘘をつかない。だからこそ、気になるのだ。
『まゆが双子?もちろん、知ってるよ。みたことあるし、それに』
ふむ。みな知っているのか。ありがとうを告げ、俺はさらに、みなを呼び出した。
社長にも確認したところ、家族構成の欄に当人であるだろう名前を見つけた。
なるほど。可愛らしい名前だなと思いつつ、さらに情報を集めたかった。
「な、まゆ。まゆの双子はさ、やっぱりまゆに似てるのか?」
『そうですねぇ。人から言われることは、寸分違わない、とかでしょうか』
『考えることも同じで、やることもほとんど同じで…今日は、譲りますけど』
『うふふ』
ふむ。以心伝心できるような家族がいるというのは、本当に微笑ましい。
この気持ちは本当だ。弟や兄が欲しかったという想いもある。
俺は事務所にお疲れさまを告げ、まゆと歩いた。
「じゃあ、お疲れさま。今日は俺はまっすぐ帰るよ」
『わかりました。Pさんも、帰りは気をつけてくださいねぇ。大丈夫ですけど』
「うん。まゆも気をつけるんだぞ。ああ、俺をつけてきたらダメだぞ」
『うふふ。わかりました』
さて、そういうなら彼女は絶対にそんなことはしない。
まゆもきちんと送り届けたし、後は家に帰るだけ。
電車に揺られ、人の波に飲まれ、俺は戻った。
…そういえば、俺は羊羹を1つしか食べていなかった気がする。
なんだか、不自然だ。あの場には羊羹が3つあった。
彼女には1つ。俺には2つ。普通、1つずつか、2つずつだろう。
ちひろさんはそんなミスをするだろうか?みな公平に均等に、がちひろさんなのだ。
そんなことを考えながら、俺は玄関のドアを開け、ただいまを告げた。
相変わらず薄暗い部屋に明かりをつけ、まゆが先回りしていないか確認した。
だが、彼女はああ言っていたのだ。そんなことはしないのだが。
当初より、もっと優しく可愛くなっている気がする。
…そのとき、玄関からただいま、と、まゆに似た声がした。
俺は全てを理解して、崩れ落ちそうになった。
いつも一緒に居ます、と言っていたまゆの言葉の意味を。
譲る、と言っていた彼女の言葉を。誰もが知っていた、その理由について。
…あの場に、アイドルの為のおやつは2つずつあったのだから。
おわり
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