過去ログ - ベルトルト「駆逐してやる……。この世から、一匹残らず……!」
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11: ◆OYNwm7H46c[saga]
2013/06/01(土) 20:44:20.04 ID:lH/DtXrEo
 その翌日、壁上に出た僕は周囲を見渡した。誰もいない。
 この区画の固定砲は整備が終わったばかりだ、それも当然だろう。
 眼下にはいつもと変わらない街並みが広がっている。赤い煉瓦の屋根はどことなく積み木を思わせた。

 午前中のすっきりとした空気。パンを焼く煙がそこかしこから上がっている。

 ウォール・ローゼ内部に続く扉も遠くに見える。確か、ジャンの実家はあのあたりだったはずだ。
 配属前の今夜だけは自由行動だから、夜には肉でも焼いて憲兵団行きのお祝いをするのだろう。

 右手の奥に見える鐘楼は、駐屯兵団の本部だ。僕たち訓練兵団の本部も兼ねている。
 市街地訓練の時なんかは苦しくて泣きそうになりながら、あの真っ白な鐘楼を目指したものだ。

 いつか守る日が来るかもしれないと、裏通りの一つ、民家ひとつまで頭に叩き込んだ。
 たまの休練日にはよく街を歩いて、露店でどうでもいい買い物をした。

 街の人たちは訓練兵にはだいたい好意的だった。
 ライナーと一緒に行きつけた食堂は、いつもスープの野菜を少しおまけしてくれた。
 今日もきっと盛況だろう。

(……変だな。シガンシナの時は、ごちゃごちゃした街だとしか思わなかったのに。
どうして今日は、こんなに)

 喉の奥が引きつるような感覚があって、僕はひとつ唾を飲んだ。


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