過去ログ - ベルトルト「駆逐してやる……。この世から、一匹残らず……!」
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◆OYNwm7H46c
[saga]
2013/06/01(土) 20:46:42.67 ID:lH/DtXrEo
「謝らないよ、みんな」
みっともなく震える声で、それでも僕は宣言する。
何も答えない眼下の街にいっそ嗜虐的な気持ちが駆り立てられて、知らず声を張り上げた。
「これは僕が選んだ、僕の道だ。僕の意思だ! だから……」
僕はそこで言葉を切り、ひとつ大きな息を吸った。
「……さよなら!」
人類の街に背を向けて、僕は走り出す。勢いをつけて、思い切り防壁から飛び降りる。
すぐにアンカーを壁に打ち込み、扉のある区画を目指した。
ことはできるだけ迅速に運ばねばならない。
壁際の低い位置は上からなら死角だが、見咎められる心配はゼロじゃない。
50Mの高さからわざわざ顔を出して覗き込もうなんて物好きが、ひとりでも現れたら厄介なことになる。
3年間。巨人殺しのために磨いた技術を、僕は今人間を殺すためだけに使っていた。
――扉はあっけないくらいにすぐだった。確かこの区画にはエレンの班がいる。
一瞬息を止めてから、用意したナイフで腕を切り裂く。
雷に打たれたような衝撃と共に眼の裏がぱあっと白くなり、意識があっさりと遠のいた。
…………。気付けば僕は地面を踏みしめて立っていた。
眼下にはあの街が、変わらない姿で横たわっている。
空を飛んでいるみたいに地面が遠く、見下ろした体には当然ながら皮膚がない。
どうやら、5年ぶりの変身はうまくいったようだ。
それなりに大きいはずの壁上固定砲すら、今は子供の玩具にみえる。
チェスの駒みたいに小さい整備班の面々が、揃いもそろって口を開けているのがおかしかった。
真正面に立っているのはエレンだ。
そういえば彼はゆうべ、面白いことを言っていたっけ。
――俺は、一匹残らず巨人を駆逐して、狭い壁の中から出る! それが、俺の夢だ……!
いいよ。それが君の夢なら、やってみるといい。
僕は僕で、僕の夢のために生きる。
いつか必ず、この手で、この足で、ふたりを故郷に連れて行こう。
――駆逐しよう。人類を。この世から、一匹残さず……!
高らかにそう叫ぶ声を心のうちに聴きながら、僕はゆっくりと片足を持ち上げた。
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