過去ログ - モバP「お題でSS」
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 17:05:59.26 ID:oF1bJHBN0

【幸子「押すなよ!、絶対に押すなよ!」】

輿水幸子はスカイダイバーではない。

しかし、世間ではその印象がつきつつある。
彼女の身を張ったアイドル活動の印象のたまものだ。
さて、今日はそんな彼女の撮影のワンシーンについての話だが。

「ボクには劣りますが、とてもきれいな景色です!」

夜景と自らの美貌を天秤にかけるのはやめなさい。
東京上空…ネオンの明かりが俺たちを安らかに包み込んでいた。
ヘリで一定の高さから、彼女はこの夜景についてのコメントを求められていた。

「あちらに見えるのが、先日オープンしたビルです!」

「ああ、こっちにあるビルには、ボクの行きつけのセレクトショップが」

「こっちには―――」

彼女の自らへの信頼もそうだが、内面的にも彼女はアイドルとして一流だった。
やることなすことに自信があるのもそういう一端があるからであろう。
さて、本日のメイン・イベント、いわゆるドッキリ企画だ。

「………」

「…これ、何ですか?」

「まさか、また…い、嫌ですよ!」

無論嫌だろう。結構高い。だが視界は明瞭だ。
プロのインストラクターに了解もとってあるゆえに。
そして、俺はここで必勝とも言える耳打ちを彼女にしたのだ。

『いいか、ここはフリだけでいいんだ…いいアピールポイントだ』

「…し、知ってましたよ!フリ、でしょう!フリ…フリ。わかってますよ!」

「あ、ああ、嫌だな!このカワイイボクがスカイダイビングなんて、嫌だな!」

緊張のあまり若干棒読みではあるが、これは立派なフリなのだ。
スタッフもグッド、というようにサインを俺に送る。
俺もそれにならって彼らに敬礼を送った。

「ぜ、絶対に押したらダメですから!」

『もちろんだ。俺を信頼してくれないか』

「…はい、そうでした…絶対に押さないでください」

『信頼してないな幸子』

『………』

「そんなことはありませんよ!」

「ああ、嫌だな!スカイダイビングなんて―――」

「あっ」

その瞬間…彼女は、世界に瞬く光の一部になった。
フリ。落ちたくないフリ、なのではない。ダチョウ倶楽部だ。
俺たちは、叫び声と共に落下していく幸子を、笑顔で見送っていた。

くるりんぱ。

                    おわり




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