59: ◆1tBDHI3yRAXR
2013/06/10(月) 21:17:14.47 ID:iR1p0cwL0
あの日あの時、流石のあたしもやってしまったと思った。
『あの、も、森久保乃々ですけど……実はもうアイド──ひぁっ!?』
新しく事務所に来たアイドルの自己紹介の途中、あたしはついついいつものノリで揉んでしまったのだ。
『うう……もうむーりぃー……』
バスト的にはあたしと同じだった……いや、今はそのことは置いといて。乃々ちゃんの視線は、完全にあたしを敵視していた。……それだけならまだよかったのに。
『ひっ、やだっ……近寄らないで……』
目に宿る恐怖の色。自業自得だけど凹んだ。そして心から謝りたいと思った。
『か、帰りますから……』
でも、物事っていうのはそう簡単には行かなかった。謝ろうとして近付けば離れられ。
『こ、この仕事キャンセルしたいんですけど……』
一緒の仕事はキャンセルされ、近付く機会さえ与えられない。あまりにも露骨で心が折れそうになったけど、あたしは諦めなかった。
『あ、愛海さん……』
夕暮れの事務所。扉を開けた乃々ちゃんと目が合った瞬間、あたしは反射的に頭を下げていた。
『……もう、大丈夫ですから。また明日……』
長い沈黙の後、その言葉と共に扉が閉まる音がした。もう許してもらえないかもしれないと思って、涙が出た。……でも、その翌朝。
『お、おはようございます……愛海、さん……』
昨日と違った意味で、泣きそうになった。
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