過去ログ - 八幡「徒然なるままに、その日暮らし」
1- 20
350: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:39:41.46 ID:9XZaaUq/0
「……そう、それなら仕方がないわね」

 数秒の溜めの後、雪ノ下は首を振りつつ立ち上がった。
表情にも態度にも動きにも、やれやれ本当はこういうことなんてしたくないのだけれど、と言わんばかりの倦怠感が滲んでいる。
そして俺の方には目もくれず、一直線に自分の鞄へと歩いて行く。
以下略



351: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:45:30.54 ID:9XZaaUq/0
「今何か不愉快なことを考えられていた気がするのだけれど」
「気のせいだろ。というか勘弁してください」
「なぜ謝るの? やっぱり良からぬことを考えていたんじゃない」
「違う。いきなり刃物持ってこられたら誰だってびびるだろうが」
「その結果反射的に謝るのね。その遺伝子に刻み込まれているかのような卑屈さは、とてもあなたらしいと思うわ」
以下略



352: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:48:44.61 ID:9XZaaUq/0
「って、おいちょっと待て、そのハサミで何をするつもりなんだ?」
「信じられない程の鈍さね、今まで何を聞いていたの? 話の流れから想像できるでしょう」
「いやできるけど、何もそんなお前がやんなくても」
「遠慮はいらないわ、さっきも言ったけれど、周囲の人たちの為だもの」
「じゃなくて、お前素人だろ。ミスられたら堪らんぞ」
以下略



353: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:52:05.93 ID:9XZaaUq/0
「あら、随分安く見てくれるじゃない。以前にも言わなかったかしら? 私は昔から何でもできたって。本格的な調髪ならともかく、前髪を整える程度のこともできないと思われているだなんて、捨て置く訳にはいかない暴言だわ」

 ――挑発と受け取ってしまうわけで。
そして、こうなった雪ノ下はそう易々とは止まらない。
浅からぬ付き合いで、そのことはよーく分かっている。
以下略



354: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:56:27.82 ID:9XZaaUq/0
「いやいや、だからちょっと待てって。失敗したらどうすんだよ、前髪やっちまったら洒落にならないぞ」
「安心しなさい、それ以上悪くなることはないから」
「既に失敗してるみたいに言うなっての、ただちょっと伸びてるだけだから、これ」
「それが見苦しいと言っているのよ。それとも――本当に、信用できない?」

以下略



355: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:00:55.23 ID:awuWAcgF0
 多分、ここで俺が否定の言葉を口にすれば。
そうすればきっと、雪ノ下は素直に引き下がってくれるだろう。
だけどそれを――雪ノ下を信用できないという言葉を、俺は口に出来るのか?
自問自答してみる無理だ。思考どころか句読点を挟む間もない即答だった。ちょっと自分でもびっくりした。

以下略



356: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:06:15.00 ID:awuWAcgF0
「んなことねぇよ、お前のことまで信用できなくなったら、いよいよ俺も終わりだわ」

 ここでは嘘や誤魔化しは無しにする。
ただ何か恥ずかしいので、言うのは視線を逸らしながらで。

以下略



357: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:13:16.87 ID:awuWAcgF0
「それじゃ、いいかしら?」
「まぁやってくれるんなら、頼むわ」
「えぇ、任せなさい」

 そっと、雪ノ下の手が俺の髪に触れてくる。
以下略



358: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:16:33.25 ID:awuWAcgF0
「……」

 雪ノ下は、一旦ハサミと櫛を机の上において、無言で俺の髪を指で弄っていた。
つまんだり、掌の上で転がしたり、指で梳いたり。
それは遊んでるというよりも、どこか科学者が検分してるみたいな細やかさを感じる。
以下略



359: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:19:23.21 ID:awuWAcgF0
「比企谷くん、少し髪が傷んでるわよ、ちゃんと手入れはしているの?」
「ん? まぁ一応それなりには」
「つまり碌にしていないのね?」
「つまるな、やってないわけじゃねぇって」
「結果として傷んでしまっている以上、やっていないのと同じよ」
以下略



360: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:24:30.89 ID:awuWAcgF0
 しかし改めて思うと、他人に頭を触らせる行為って普通に怖いな。
何というか、生殺与奪の権利を握られてる感が半端ない。
ましてやそれを握っているのが雪ノ下とくれば、それは恐怖を感じない方がおかしいとも言える。
やべぇ、俺早まった?

以下略



892Res/397.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice