過去ログ - 八幡「徒然なるままに、その日暮らし」
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353: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:52:05.93 ID:9XZaaUq/0
「あら、随分安く見てくれるじゃない。以前にも言わなかったかしら? 私は昔から何でもできたって。本格的な調髪ならともかく、前髪を整える程度のこともできないと思われているだなんて、捨て置く訳にはいかない暴言だわ」

 ――挑発と受け取ってしまうわけで。
そして、こうなった雪ノ下はそう易々とは止まらない。
浅からぬ付き合いで、そのことはよーく分かっている。
以下略



354: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/15(月) 23:56:27.82 ID:9XZaaUq/0
「いやいや、だからちょっと待てって。失敗したらどうすんだよ、前髪やっちまったら洒落にならないぞ」
「安心しなさい、それ以上悪くなることはないから」
「既に失敗してるみたいに言うなっての、ただちょっと伸びてるだけだから、これ」
「それが見苦しいと言っているのよ。それとも――本当に、信用できない?」

以下略



355: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:00:55.23 ID:awuWAcgF0
 多分、ここで俺が否定の言葉を口にすれば。
そうすればきっと、雪ノ下は素直に引き下がってくれるだろう。
だけどそれを――雪ノ下を信用できないという言葉を、俺は口に出来るのか?
自問自答してみる無理だ。思考どころか句読点を挟む間もない即答だった。ちょっと自分でもびっくりした。

以下略



356: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:06:15.00 ID:awuWAcgF0
「んなことねぇよ、お前のことまで信用できなくなったら、いよいよ俺も終わりだわ」

 ここでは嘘や誤魔化しは無しにする。
ただ何か恥ずかしいので、言うのは視線を逸らしながらで。

以下略



357: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:13:16.87 ID:awuWAcgF0
「それじゃ、いいかしら?」
「まぁやってくれるんなら、頼むわ」
「えぇ、任せなさい」

 そっと、雪ノ下の手が俺の髪に触れてくる。
以下略



358: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:16:33.25 ID:awuWAcgF0
「……」

 雪ノ下は、一旦ハサミと櫛を机の上において、無言で俺の髪を指で弄っていた。
つまんだり、掌の上で転がしたり、指で梳いたり。
それは遊んでるというよりも、どこか科学者が検分してるみたいな細やかさを感じる。
以下略



359: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:19:23.21 ID:awuWAcgF0
「比企谷くん、少し髪が傷んでるわよ、ちゃんと手入れはしているの?」
「ん? まぁ一応それなりには」
「つまり碌にしていないのね?」
「つまるな、やってないわけじゃねぇって」
「結果として傷んでしまっている以上、やっていないのと同じよ」
以下略



360: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:24:30.89 ID:awuWAcgF0
 しかし改めて思うと、他人に頭を触らせる行為って普通に怖いな。
何というか、生殺与奪の権利を握られてる感が半端ない。
ましてやそれを握っているのが雪ノ下とくれば、それは恐怖を感じない方がおかしいとも言える。
やべぇ、俺早まった?

以下略



361: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:30:30.04 ID:awuWAcgF0
「全く、無駄なことに時間を使ってしまったわ」
「散々俺を攻撃しといてその言い草かよ」
「とにかく、頭皮と頭髪の手入れはちゃんとなさい。油断していると失うわよ」
「怖い言い方すんな、そんな簡単に禿げて堪るか」
「失ってから気付いても遅いのに……」
以下略



362: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:33:37.04 ID:awuWAcgF0
「放っとけ。小町の為と思うのが一番モチベーション上がるんだよ」
「そう、まぁ好きにしたらいいわ。とりあえず前髪に触れるから目を瞑っていなさい」
「お、おう、お手柔らかにな」

 言われて素直に目を閉じる。
以下略



363: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:38:15.87 ID:awuWAcgF0
 視覚が閉ざされている分だけ他の感覚が鋭くなっているらしく、些細なことも過敏に感じられてしまう。
嗅覚は微かに香る良い匂いを検知して。
聴覚は雪ノ下の吐息すら捉えてしまい。
触角は俺の髪に触れる雪ノ下の細い指の感触に集中していた。

以下略



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