過去ログ - 八幡「徒然なるままに、その日暮らし」
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359: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:19:23.21 ID:awuWAcgF0
「比企谷くん、少し髪が傷んでるわよ、ちゃんと手入れはしているの?」
「ん? まぁ一応それなりには」
「つまり碌にしていないのね?」
「つまるな、やってないわけじゃねぇって」
「結果として傷んでしまっている以上、やっていないのと同じよ」
以下略



360: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:24:30.89 ID:awuWAcgF0
 しかし改めて思うと、他人に頭を触らせる行為って普通に怖いな。
何というか、生殺与奪の権利を握られてる感が半端ない。
ましてやそれを握っているのが雪ノ下とくれば、それは恐怖を感じない方がおかしいとも言える。
やべぇ、俺早まった?

以下略



361: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:30:30.04 ID:awuWAcgF0
「全く、無駄なことに時間を使ってしまったわ」
「散々俺を攻撃しといてその言い草かよ」
「とにかく、頭皮と頭髪の手入れはちゃんとなさい。油断していると失うわよ」
「怖い言い方すんな、そんな簡単に禿げて堪るか」
「失ってから気付いても遅いのに……」
以下略



362: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:33:37.04 ID:awuWAcgF0
「放っとけ。小町の為と思うのが一番モチベーション上がるんだよ」
「そう、まぁ好きにしたらいいわ。とりあえず前髪に触れるから目を瞑っていなさい」
「お、おう、お手柔らかにな」

 言われて素直に目を閉じる。
以下略



363: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:38:15.87 ID:awuWAcgF0
 視覚が閉ざされている分だけ他の感覚が鋭くなっているらしく、些細なことも過敏に感じられてしまう。
嗅覚は微かに香る良い匂いを検知して。
聴覚は雪ノ下の吐息すら捉えてしまい。
触角は俺の髪に触れる雪ノ下の細い指の感触に集中していた。

以下略



364: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:42:59.45 ID:awuWAcgF0

「癖があるわね、あなたの髪。やはり性格が捻くれていると髪にも出るのかしら」
「なるほど、オブラートに包む気のない常に直接的で直球勝負の雪ノ下さんは、だからそんなにストレートな髪なんだな」
「そうね、あなたと違って、ね」

以下略



365: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:49:26.70 ID:awuWAcgF0
「……んなもん仕方ないだろ、そりゃお前の髪と比べられたら誰の髪だって数段落ちるわ、綺麗過ぎるんだよ、お前の髪は」
「え?」
「つーかそんだけ長いのに毛先までさらさらとか、全体に艶があってきらきらしてるとか、手入れにどんだけ手間暇かけてんだよ。むしろ周りの子が可哀想になるレベルだわ」
「そ、そう?」

以下略



366: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:54:09.01 ID:awuWAcgF0
「ま、まぁそう思うのも当然と言えば当然のことかしら、あなたもたまにはまともな事を言うのね。えぇそうよ、確かにこの髪は私の数多い美点の中でも特に自分でも気に入っている部分だわ。そのせいで余計な苦労を背負うこともあったくらいだもの。そう、周囲の嫉妬の対象としてね。もちろん学校の他の女子の中にも髪のきれいな子は少なからずいたけれど、当然ながら私と並んでなお誇れる程の美麗さを備えていた人なんていなかったわ。あとはお決まりのパターンね、みんな必死で私を引きずり降ろそうとしていたものよ、もちろん私が負けることなんてなかったけれど。それにしても、誰も彼も私の髪を持って生まれたもののように言ってくるのは腹立たしかったわ。私がどれほどその手入れに心を砕いてきたか、どれほど時間と熱意を注いでいるかをまるで理解しようともしないのだから。あそこまで行くと最早愚かしさを通り越して憐みすら抱いてしまうわね。人を妬む前にどうして自分を高めようという努力ができないのかしら。そもそも――」
「ちょっと痛いって、待て待て待て、それ以上は止めて、禿げちゃうから、十円禿げとかマジ勘弁だから」



367: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 00:57:41.49 ID:awuWAcgF0
 指の動きが言葉と共に加速してきて、さすがにストップをかけずにはいられなかった。
いやホント何かちょっと痛いから。摩擦で割と熱くなってるから。
全くとんだテロ行為である。

 しかしこいつって本当に照れると雄弁になるよな、しかもすげぇ早口で全く噛まずに言い切ってるし。
以下略



368: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 01:01:38.93 ID:awuWAcgF0
「――んんっ、な、何かしら?」
「何かしら、じゃねぇだろ。言っとくけど全然誤魔化せてないからな」
「誤魔化すだなんて心外ね、全く何を言っているのかしら。ほら、目を閉じていなさいと言ったでしょう、たった数分大人しくしていることもできないの? ぜんまい仕掛けのおもちゃでもあるまいし、じっとしていなさい」
「あーもう、分かったよ、大人しくしてるって」

以下略



369: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/07/16(火) 01:04:31.67 ID:awuWAcgF0
「動かないでね」
「分かってる」

 しゃきっと音がして、髪が切れる感触がする。
それから断続的に、少しずつ、しゃきしゃきと髪が切られていく。
以下略



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