過去ログ - 佐々木千枝「千枝は、わるい子です」
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/09(日) 00:31:07.96 ID:j7T+CQqZ0
 イメージビデオの撮影のために、私は紅葉が舞い踊る京都を歩いていた。両手で受け皿を作ると、幾枚かの紅葉が吸い込まれるように滑り込んでくる。両手に重なった紅葉は、どれも儚い美しさを感じさせ、哀憐を誘う。それらを抱えたまま、私はプロデューサーさんに駆け寄った。

「見て下さい。こんなにいっぱい紅葉が集まりました!」

「おお、よく集まったな。どれも綺麗なもんだ」

 プロデューサーさんは私の持っている紅葉の内から一つを摘み取り、それを眺めて小さく頷きながら感嘆の吐息を漏らした。

「はい、とってもキレイですよね……」

 言葉を続けようか、数拍ほど逡巡してから口を開く。

「千枝、プロデューサーさんといっしょに京都に来れてよかったです。お仕事してて、良かったなって……!」 

「嬉しいこと言ってくれるなぁ。俺も千枝と仕事ができて、嬉しいよ」

 プロデューサーさんは満面の笑みを浮かべ、そう言ってくれる。けれども、彼の嬉しいは私のそれとは根本が違っているのだろう。私がもっとオトナであれば、彼と私の感情のズレは少なかったのかもしれない。

 はがゆく思い、私はプロデューサーさんから一歩距離をとり、その場でくるりと一回転してからポーズをとる。呆然とする彼に向かって、私は問う。

「あの……着物、似合ってますか」

「ああ。さっきも言ったけど、似合ってて可愛いよ」

 それなら、ともう一度質問する。

「千枝、オトナっぽく……見えますか」

 私の問いに、プロデューサーさんは何度か瞬きをしてから答えた。

「そうだな。初めて会ったときよりは、だいぶ大人っぽく見えるな」

 もやもやとする曖昧な答えに、私は少しだけ眉根を寄せて、無言で抗議をしてみせた。







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