16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 15:19:21.11 ID:CY9RELSC0
【氏家むつみの冒険】
氏家むつみ。つまり、私が冒険をはじめられたのは、彼のおかげ。
Pさんと出会って、私の冒険は新たなはじまりを告げた。
今まで1人でみてきたモノクロの景色は色鮮やかに変化した。
どこをみても新鮮で、毎日が楽しくて仕方がない。そう思っている。
けれど…冒険も、ときどき中断してしまうことがある。
Pさんが頑張って私のために取ってきてくれた仕事。
社長さんだって、ちひろさんだって。私のために、って。
なのに、私はその期待に応えられなかった。どうして、だろう。
『むつみ。今日は、たまたま調子が悪かったんだ。次を頑張ろう』
彼はそう言って笑うと、私の手をぎゅっと握ってくれた。
私だけが怒られるなら、それで構わない。けれど、彼まで、なんて。
きっと彼は帰ってから怒られるのだろう。そう考えると、申し訳なくて、言った。
「Pさん。すみませんでした」
『いいんだ。俺だって、もっとできることがあっただろうに、さ』
大丈夫だから。気にしないでいい。そう言ってくれるたびに、涙が溢れて。
彼の気遣いが、私の右手のぬくもりが、どこか遠くに感じて。
でも、Pさんはそれを全て見抜いていて。
『これで、全部がダメになったわけじゃない』
『ええと、そうだな。一時中断、ってところかな』
『こんな日もある。これから、そういうことも増えてくる』
『でもさ』
『俺は、むつみのプロデューサーだからさ』
『いつまでも、どこでだって、俺はむつみの隣にいるから』
彼はそう言って、笑ってくれて。
さっきより、ずっと強く手を握ってくれて。
ああ。私は、何の勘違いを。私は恥ずかしくて、言った。
「はいっ…そう、でした」
「私には、Pさんがいるんですから」
『明日には、またいいことがあると思う。むつみが普段言ってるだろ?』
「ふふっ、ええ。でも、もう、今日はいいこと、ありましたよ」
その答えを、彼に伝えるのはまだ早い、そう思った。
けれど、今日。言ってくれたことへの感謝だけは、きちんと伝えたい。
そう思ったときには、彼の手のあたたかみをすり抜けて、前を歩いて、振り返って。
「Pさん、いつまでも、一緒に新しい世界に挑戦してくださいねっ」
私は笑った。
おわり
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