過去ログ - モバP「お題でSS」
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198: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/06/09(日) 23:48:15.87 ID:CY9RELSC0

【由愛が描く夢】

成宮由愛は、どのような夢を描いたのだろうか。

ママが勝手に応募して。そう呟いた。
彼女はアイドル活動に乗り気ではなかったらしい。
けれど、俺は彼女がいいと思えたから、彼女を採用していた。

初めての面接の上で、知らない人に会うのは無理である。そう言っていた。

その態度の裏には、自らの変化を望んでいるように見えた。
俺の勝手な妄想にすぎないかもしれない。それでもそう思っていた。
当然、最初は知名度を広げるための営業にも苦労をせざるを得なかったのだ。

しかし、俺はそれに関して辛いなどとは思ったことがなかった。

ごめんなさい。すみません。彼女は謝りつつも、懸命に努力していた。
俺も所属当初であったゆえ、右も左も全くもってわからない。
ゆえに、互いで互いを励まし合ってここまできた。

『おはよう…ございます』

今では、彼女から俺に挨拶をしてくれるまでになっている。
嬉しい変化と言える。だが、彼女自身は、それをどう思っているのか。
俺が無理矢理変化せざるを得ない状況に追い込んだ、という側面的見方もある。

『ぷ、プロデューサーさん…何を、考えているんですか』

ああ。そう言って、デスクから顔を上げる。
成宮由愛の心配そうな顔が俺をのぞきこんでいた。
俺は正直に告げることにした。彼女への反省と感謝の2つを。

『………』

『私は、よかった…と、思っています』

『人と話すのも、会うのも…苦手だった、私…です、けど』

『もう、今は…ファンの方とも、楽しく、話せていますし』

『それに…これは、1つの夢でも、あったんです』

『変わりたい。そう、思っていたこともあったので…だから、感謝しています』

そう、なのか。ああ、由愛の描く夢の一端は、叶えられたのか。
しかし、そうなると。夢が叶ってしまった由愛は―――。
そう思ったときには、彼女が口を開いていた。

『あと、1つ。夢が、あるんです』

『これは…プロデューサーさんに出会って、できた夢、です』

『必ず、トップアイドルにする…そう、言ってくれました』

『だから…これは、私の。成宮由愛だけの、夢じゃなくて』

『私とプロデューサーさんの、2人の夢です、から』

『一緒に、これからも…よろしく、お願いします』

初めて彼女の想い…彼女が描く夢を知った。
出会った日に誓ったことを、覚えていてくれたのか。
なら、きっと。いいや、絶対に。俺は、それを叶えてみせる。

当初のような、少々ぎこちなかった笑みは、そこにはなかった。
もう、心から人を笑顔にさせる笑顔が、そこにあった。
それに釣られて、俺も笑って、彼女は言う。

『ずっと、ずっと―――。パートナーで、いてくださいね』

                      おわり




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