過去ログ - モバP「お題でSS」
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45: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/06/09(日) 15:50:45.72 ID:CY9RELSC0

【島村卯月にだって頑張れない事もある】

島村卯月はいつも頑張っている。

頑張りましょう、と励ましたり、頑張る、と明言した上で頑張ったり。
とにかく彼女は素晴らしく努力を重んじるタイプである。
俺もそれにならっているほどである。

さて、その上で思うこととして、彼女に頑張れない事があるのか、だ。

無論だが、彼女にだって苦手なことはある。
それを見つけさえすれば分かるような問いだと言える。
そこまで考えをまとめた俺は、彼女が出来ないことを探していた。

「卯月。卯月には、頑張れないこと…っていうのは、あるのか?」

『頑張れないこと、ですか?考えたこともないです』

「やっぱり、そうか。ごめんな、変なことを聞いて」

卯月に飲み物を買ってやり、彼女は先に事務所への階段を登った。
俺は130円の少し高級な缶コーヒーの香りを楽しんだ。
一息ついて、俺も続いて階段を登っていた。

「もう1回!」

うん?なにやら、トレーナーさんの声が聞こえるな。
レッスン中なのだろうか。なら、少し慎重に入らなければ。
音を立てないように。練習の邪魔になってはいけない。慎重に、と。

『いい加減にしてください!私はもううんざりなんです!』

彼女の涙のいりまじった絶叫が聞こえてくる。
これが演技?あまりにもリアリティがありすぎる。
嗚咽、呼吸、しゃっくりまで見事に再現しているのだ。

「あ、あのー…あ、練習中おじゃまします」

ああ、どうぞ。トレーナーさんは促していれてくれた。
卯月は俺には気付かないようで、練習に励む。
だがトレーナーさんの判断は厳しい。

『卯月ちゃん、これについてはなかなか頑張れないらしくて』

『ああ、卯月ちゃん。そろそろ、休憩入れましょう』

「お疲れ様、卯月」

「ああ、いきなり聞くのもあれだけど、あれは何の演技なんだ?」

『…え、えっと』

彼女は答えにくそうに上目遣いで俺をみる。
演技の延長なのか、その目元には涙がたまっていた。
泣かせてしまったかのような罪悪感と共に、彼女は言ってくれた。

『好きな人に愛想を尽かした、ってシーンの演技なんです』

『けれど…』

『そんなこと、ありえませんから…私には、頑張れなくて』

ああ、そうだったのか。頑張ってくれ、と伝えた。
卯月ははいと元気よく返事をして思いついたように笑った。
どうしてかにっこりと笑って、台本を取り出して、弾んだ声で言った。

『プロデューサーさん。私…あなたのこと、だーいきらいっ、ですっ』

                  おわり




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