48: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/06/09(日) 16:02:16.15 ID:CY9RELSC0
【岡崎泰葉の希望】
幼い頃からずっと芸能界で生きてきた私。
岡崎泰葉さん。そう呼ばれる度に私は笑顔を浮かべた。
誰にも負けないような、誰からも愛されるような上辺の笑顔を。
笑顔を作って、自らを理想の姿に作り変え、私は私がわからなくなった。
ああ、私は、何が好きで、何が嫌いか。
どんな顔をして笑って、どんな顔をして泣いていたか。
気を抜いたときに出てきた些細な癖でさえ誰かの真似であるような。
一挙一動。何もかもが私自身のものであるという確かな証拠が得られなかった。
芸能界というのは、華やかなだけの世界であるということなど、十分承知している。
昨日まで同じ仕事をしていた彼女が、今日は敵になっている。
嫌がらせを受けたり、誹謗中傷を浴びるなど日常。
私はさらに強固に自らを作り替えた。
けれど、あるとき限界が訪れた。私もどうやら、立派な人間だったらしい。
今までの笑顔が崩壊するのと鬱憤を晴らそうとするのは同時だった。
私は積み上げてきた何もかもを捨て、芸能界から姿を消した。
そしてその頃、流行っていたアイドルに目を奪われた。
自らを貫き人を笑顔にして、その笑顔で自らも幸せを感じて。
ああ、私は上手く笑えているだろうか。自然な笑顔だろうか。
とてもそうは言えない。心から笑ったことなど、いつのことだったか。
アイドルになれば、私も自然に笑えるのだろうか。何も、私には分からなかった。
だからこそ、私の事を何も知らない誰かに、答えを委ねた。
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