56: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/06/09(日) 16:16:31.33 ID:CY9RELSC0
「俺は、アイドルを輝かせたいな、って思ってるんだ」
ようやく、私は理解した。今までの違和感を。違いを。
マネージャーは私の仕事の管理をするだけだった。だが、彼は。
彼は、私と共に仕事をし、共に成長を分かち合い…そう、思っている、と。
それが分かった瞬間には、私は今までの非礼を詫びていた。
すみませんでした。今まで、失礼な態度をとっていました。
急に態度を入れ替えた私に、彼は困惑しているようだった。
「あ、ああ。気にしなくていいんだ。俺もわからないことだらけなんだ」
「そう。むしろ、さ。泰葉に教えてもらうほうが多いんだ」
「だから、これからもよろしくな、泰葉先生」
『…なんですか、それ。先生、だなんて』
「俺より芸能界、長いからさ。ずっとずっと、先輩だ」
「あ…でもさ。いつかは、頼ってもらえるようになろうと思ってる」
そう言って笑っていた彼の表情を、私は忘れないだろう。
まだまだ彼とはぎこちないところはある。けれど、もう不安はない。
不安や心配なんて、もう、心のどこにも存在していない。あるのは、希望だけ。
「おはようございます、今日もよろしくお願いします」
『ああ、泰葉。おはよう。今日も頑張ろうな』
過去に置き忘れてきた笑顔は、いつの間にか私の元へ戻ってきていた。
彼もそれに気付いたようだったけど、指摘はしてこなかった。
代わりに、私と同じくらいにっこりと笑ってみせた。
「行きましょう、プロデューサー。置いていきますよ」
『ああ、ごめん。すぐに行くよ』
「私にとっての幸せって、アイドルのお仕事を楽しめる今の環境なのかな、って」
自らを捨ててでも他人を重んじる彼だからこそ。
だからこそ…私は、新たな一歩を踏み出そうと思っている。
そう。こうやって、彼への想いを表情に出して、未来へと、歩を伸ばす。
「Pさんの、おかげです」
どこまでも自然な笑顔で、私は笑えた。
おわり
267Res/106.25 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。