14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 17:55:20.11 ID:sFJRaXSc0
「プロデューサー、私この前、お洒落なカフェ見つけたんだ! 帰りに寄ってこ?」
「いいけど、そういうお誘いは衣装を脱いでからしろ」
「えっ……脱げ? そんなっ……ダメだよ、まだ私、こ、心の準備が……」
「馬鹿なこと言ってないで、はい、気をつけ、汗拭いてやるから。終わったら早く着替えておいで」
「はーい♪」
目を逸らしたいのに、どうしても心がそっちを向いてしまう。
仲の良さを隠そうともしてない、そんな会話が聞こえます。
……ううん、隠す必要なんてない。
本当はこれが、プロデューサーとアイドルの、理想的な関係。
裏方で作業をしていたスタッフの皆さんも、和やかに二人を包んでいました。
そこに交われないのは、私だけ。
異物、邪魔者、蚊帳の外、……表す言葉は、何でもいいけど。
仲睦まじい二人の姿に、胸がきゅうと締めつけられるような気がして。
追い出されるように、私はステージ裏を抜けました。
「はあ……」
ステージ裏と廊下を仕切る、固い金属の扉に背を当てます。
うつむいて、衣装の裾を掴みっぱなしでいた手を、ふと離しました。
分厚い扉越しでも聞こえる声に、じくじくと疼く胸を……その手で押さえました。
「……いいなあ」
本当は気づいていました。
……あの人たちを初めて見たときから。誤魔化しては、いましたけど。
私は嫉妬していた。私は寂しかった。
比べてしまって……すごくすごく、寂しい。
すぐそこにあるように見えたものは、私からずっと遠い場所にしかないものなんだ。
51Res/46.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。