23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 18:30:11.75 ID:sFJRaXSc0
「それじゃあ名刺だけ、渡してもいいかな。受け取ってもらえる?」
言いながら、ケースから、一枚の紙を取り出した男の人。
差し出された小さな紙を、このとき、受け取っていなかったら。
「もしもその気になったら、連絡してくれ」
……私はどうなっていただろうか。
「ならなかったら、事務所の人に話しても、捨てても構わないから」
相手の子が窺うように私を見てるのはわかりました。
けれど私は、ひたすら名刺に目を落としていました。
事務所の名前の下に添えられた、プロデューサーの文字。
もし、私が望んだら。
……この人は私のこと、ちゃんと見てくれる、のかな。
「何かあったときは、遠慮しなくていいからね。ごめんな、変なこと言って」
ケースをしまいながら、私にそんな言葉を投げかける、私の目の前の、男の人。
……名刺をつまむ指に、力が入りました。
……今になって、思うなら。
プロデューサーはこのときにはもう、全部、見抜いてた。
彼らとは、その日はそれで、別れました。
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