過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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16: ◆2cupU1gSNo
2013/06/27(木) 20:05:29.74 ID:Z5CFCVew0
「何だろうね」
里志が俺の背中から千反田に渡された文庫本に視線をやる。
ついさっきまで千反田の妙な様子を間近で見ていた里志だ。
この文庫本への興味は俺以上だろう。
「『ゲーム開始!』って書いてあるね」
「見れば分かる」
「ホータローは千反田となにかゲームをする約束でもあったのかい?」
「まさか」
返しながら俺は自分の椅子に座る。
里志が部室の入口の方に視線を向けてなにかを言いたげだったが、
結局はなにも言わずに自分の席に戻って溜息に似た息をひとつ吐いた。
おそらく里志は「千反田さんを追わないのかい?」と俺に問いたかったのだろう。
それが最善の策に思えなくもないのは確かだ。
『ゲーム開始!』と突然宣言されても、意図が不明に過ぎる。
まずは急に去った千反田を捕まえて意図を問いただす方が先決に思える。
だが里志は俺にそう言わなかったし、俺も千反田を追おうとはしなかった。
あいつの健脚に本気で逃げ回られては捕まえようもない。
それ以上に千反田が『ゲーム開始!』と言うのなら、
俺がこのゲームをクリアしない限りあいつも口を割らないはずだ。
『ゲーム』に参加しない選択肢もあったが、俺はそうしないことに決めた。
このまま帰宅しても千反田のことが気になってよく眠れないのは確かだろうからだ。
「『ゲーム』って言葉に心当たりはあるのかい?」
いつもぶら下げている巾着袋の中を探りながら里志が俺に訊ねる。
今の状況、千反田のゲームについて考えることこそが事態の収束に最も近い。
それに気付けないほど里志も鈍くはない。
俺は少しだけ過去を思い出してみてから首を横に振った。
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