過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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3: ◆2cupU1gSNo
2013/06/09(日) 18:28:36.49 ID:Zr8YYylw0


「そんなに髪を短くしてたのか?」


「そうだな、やっぱ髪は短い方が楽じゃんか。
澪と梓もだけどロングヘアーにしてる子はすげーよな。
特に夏とか暑苦しいだろうし」


澪と梓。
何度か聞いた事がある名前だ。
こいつが部長を務めているという部の部員の名前。
こいつの交遊関係など俺には関係ない。
などといつものように思うわけにはいかない事情が今の俺にはあった。
だから部室に足を運ぶのが億劫だったのだ、俺は。


「ホータローはさ」


「どうした?」


「やっぱロングの方が好きなのか?
男子ってロングが好きだってよく聞くしさ」


「……考えた事もないな」


「ホントかー?
照れんな照れんな」


「別に照れてないが」


軽口めいたやりとりをしながらも、俺はどうしても違和感が拭えずに口の中が渇くのを感じた。
俺はこうなる前のこいつとこんなに軽口を叩きあったことがない。
それを喜ぶべきなのか、悲しむべきなのかも分からない。
ただ目の前の現実に圧倒されてしまうだけだ。


「どうしたんだ、ホータロー?」


俺が少し黙った事を気にしたのか、そいつは上目遣いで大きな瞳を開いて首を傾げた。
気が付けば俺の手が届くくらいの距離までにじり寄って来ていた。
こんなところだけこいつはこうなる前のあいつとよく似ている。
「わたし、気になります!」と言わないのが、あいつとの一番大きな違いだろうか。


「いや、別に何でもない」


応じながら、俺はこうなる前のこいつの事を思い出す。
楚々としたお嬢様といった外見と性格をしながら、
その内面には貪欲な好奇心の獣を飼っていた我が古典部部長、千反田える。
肩まで届く髪と大きな瞳が特徴で小さなことにもすぐに好奇心を働かせる。
別に俺はあいつが嫌いなわけではなかった。
相手をするのが面倒なことも多々あったが、多少の面倒なら請け負うのもやぶさかではなかった。
それくらいにはあいつを悪く思っていなかった。
しかしこれはあまりにも想定外だ。

今のこいつは今までの千反田とはあまりにも違い過ぎた。
同じなのはほとんど姿形だけ。
声は同じだが語調は微妙に違っていたし、口調は全く違っていた。
性格は楚々とはとても称せず、強いて言うならば男勝りだろうか。
長い髪が苦手で、ポニーテールとカチューシャでどうにか首筋と額を涼しくさせている。
そして、何よりも。


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