過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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4: ◆2cupU1gSNo
2013/06/09(日) 18:29:14.37 ID:Zr8YYylw0
「それよりちょっと休ませてくれないか?
掃除が長引いたから肩が痛くてな。
伊原たちが来るまでゆっくりさせてくれ」
不躾な言い方だったかもしれない。
だがこれ以上一人きりで変わり果てたこいつ……、千反田と話す気力が無いのも確かだった。
いや、今のこいつは千反田じゃなかったんだったか。
「あいよ、お疲れさん、ホータロー。
何だったら私が肩でも揉んでやろうか?」
「結構だ、千反……、いや、田井中」
俺が手を振ると、そいつは気を悪くした風でもなく、
今まで千反田が使っていた椅子に座って軽く肩を竦めた。
そうしてから机の上に置かれていたシャーペンを手に取り、リズミカルに机を叩き始める。
もしも里志がやったのなら雑音にしかならなかっただろうが、
そいつ……、田井中の叩く机の音は全く不快なリズムではなかった。
田井中が前に語った通り、本当に軽音部でドラムを担当していたのかもしれない。
こうなる前の千反田はこれほどのリズム感を備えてはいなかったはずだ。
こうなる前、つまり二週間前の六月中旬。
何の前触れもなく唐突に、田井中は俺たちの前に千反田の身体を借りて顕れた。
千反田の身体を借りた、というのは便宜上の表現だが、少なくとも俺にはそうとしか思えなかった。
田井中律。
そう名乗るこいつのリズムに耳を傾けながら、俺はその日の事を思い出す。
あの日は、そう、マラソン大会こと「星ヶ谷杯」が終わり、本格的に夏の訪れを感じ始めた頃の事だった。
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