過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
1- 20
41: ◆2cupU1gSNo
2013/07/16(火) 19:24:06.17 ID:aapC8NGG0
もしかしたら千反田はその俺たちの考えを予測していたのかもしれない。
いや、むしろこの違和感を与えるために、
千反田は俺たちに『ゲーム』を仕掛けてきたのではないか?
今の自分が俺たちのよく知る千反田とは違うことを俺たちに強く実感させるために。
その思考を俺の表情から読み取ったのだろうか。
千反田はまた悪戯っぽく笑うと俺たちの席を指し示した。


「部屋の端で集まっててもしょうがないしさ、とりあえず座らないか?
この部屋、下手にクーラー使うと怒られるんだろ?
一ヶ所に固まってると暑苦しくてしょうがないじゃん?」


それは千反田の言う通りだった。
俺も里志も伊原もかなり汗を掻いてしまっている。
その汗の原因が暑苦しさだけにあるのかどうか定かではないが。
それぞれの定位置に座り、俺たちは一斉に千反田に不審の視線を投げかけた。


「そんな怖い目で見んなよー」


千反田が苦笑を浮かべる。
承知の上の行動だったのだろうが、さすがに一度に不審の視線を向けられては戸惑うらしい。
その事実に俺は少しだけ安心する気分だった。
これで少なくとも今の千反田にも人並みの感情があることになる。


「あっ、そうだ、ホータロー」


なにかを思い出したのか、それともこれも予定調和の内なのか。
とにかく千反田がわざとらしく指を立てて切り出した。
今は千反田、いや、こいつの方針に従っておく方が得策だろう。
俺はこいつの身振りから不審な点を見逃さないよう、油断せずに頷いてみせる。


「どうした?」


「さっきも言ったけど、ゲームクリアおめでとうな。
もうちょっと時間が掛かると思ってたんだけど、予想以上に早かったよなー。
これなら私のお願いも聞いてもらえそうで助かるよ」


「お願い?」


伊原が横から首を傾げる。
第二理科準備室でのこいつの言葉を聞いていないのだから、当然と言えば当然だった。
「おまえたちに頼みたいことがあるんだよ」とあの時のこいつはそう俺たちに耳打ちしていた。
この『ゲーム』の開催理由はつまりはそういうことだったのだ。


「試験は合格ってわけか?」


「合格も合格だよ、ホータロー。
まさかこんなに鋭い奴だとは思ってなかったよ。
仕方ないことだったんだけど試しちゃってごめんな、ホータロー。
それに里志も」


「試験ってどういうことなのよ、折木?」


また伊原が俺に突っ掛かってくる。
だが今はそれが助かった。
誰かに今の事態を説明することは、想像以上に自分の中の考えをまとめさせてくれるものだからだ。
俺だってまだ完全に事態を把握し切れてるわけじゃない。
小さく深呼吸してから、俺は伊原に説明を始める。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
467Res/621.50 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice