31: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:19:51.76 ID:axl5mVCd0
「…………」
「ん……?」
千早の寝顔を静かに見つめていると、少しだけ眉間にしわを寄せているように見えた。
……何か、怖い夢でも見ているのだろうか?
32: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:20:26.74 ID:axl5mVCd0
……沈黙の中で、俺は入院していた時の事を思い出した。
一人でただ寝たり、座っているだけの病室で暇を潰す為にしていた事は――
確か、千早の歌を思い出す事だったか。
33: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:21:02.24 ID:axl5mVCd0
楽しそうで、それなのに歌も上手くて。
その時の俺は少し、千早が遠い所に行ってしまったような感覚を抱いていた。
でも、そんな事を考えていた時の事だったか?千早がいきなり病室に飛び込んできたのは。
34: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:21:42.68 ID:axl5mVCd0
――だから、俺はこの歌に想いを託す。
千早が、過去に縛られずに心の底から笑えるように。
安心して歌う事ができるように。
35: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:22:24.28 ID:axl5mVCd0
「……ふぅ」
ある程度の内容が固まり、俺は一息つく。
「……んにゃ?」
36: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:22:53.67 ID:axl5mVCd0
「まぁ、良く寝れたか? 途中で寝苦しそうにしてた時もあったが」
「……はい。 でも、プロデューサーの声が聞こえたような気がしたので大丈夫でした」
お、俺の声が届いていたのか……?
37: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:23:38.42 ID:axl5mVCd0
「えーと、ここが千早に当たる部分でここが俺に当たる部分なんだが……どうかな?」
「聴いた人、理解してくれますかね? 大丈夫でしょうか?」
「……大丈夫だと信じたいが聴いた人の想像力に賭ける事にしよう」
「どうなっても知りませんよ……」
38: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:24:16.79 ID:axl5mVCd0
だが時間はかかったものの、千早の協力もあり
奮闘開始から二週間後、予想以上の歌詞が完成する。
「ここまで一つの事に時間をかけたのは始めてだ……」
「物語よりも短いから、と油断していたらこんなにも時間がかかるなんて……」
39: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:24:56.10 ID:axl5mVCd0
「な、なら先にやってしまうか……ここまで来たら最後まで終わらせよう」
「逆に何故歌詞が出来上がった時点で気を抜いたのかが私にはわかりませんが……」
「たぶん物語を完成させた時と同じ感覚なんだ……ごめん、油断してた」
「気をつけてくださいね? 今度こそ最後の作業なんですから」
40: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:25:45.99 ID:axl5mVCd0
……何故かこの二人で考え続ける時間が名残惜しくもあった。
そして、このまま先に進む事が少し怖くもあった。
だが、進まなくてはならない。
いや、進むんだ。それが俺達の望んだ夢なのだから……
41: ◆K/laHoEzHc[saga]
2013/06/10(月) 18:26:12.69 ID:axl5mVCd0
時間的に考えればもう結構経つ事にはなるが、俺はあの日の事を昨日起きた事のように思い出す事ができる。
……それだけ、その時の俺の願いが込められていたのだろう。
まさか、本当に実現するとはな。
嬉しくもあるが、少し悲しくもある。
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