32: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/15(土) 22:17:34.31 ID:MBAzp3vzo
カードホルダーを受け取ると、それを無造作にスーツの内ポケットへ放り込んだ。そして、彼女の頭に手を置く。一瞬彼女の体がびくり、となった。
『済まなかった。驚かせたな』
「あ……」
少し涙目になっている彼女は、小さくそう声を出すと、ニコリと微笑を返してくる。不覚にも可愛い、と思ってしまった。後で自分に懲罰でも課さなければならない気がする。
『じゃあ、更衣室を借りるよ。着替えるからさ』
「……あ、はいー♪ わかりましたっ」
のんびりした彼女の声と華が咲くような笑顔を見て、少しどきりとする。それを悟られないように平静なまま、俺は更衣室へと身を滑り込ませた。
『……やれやれ』
茄子さんはもう、いつものペースに戻ってくれたようだ。だから、俺ももう気にすることはない。それにうまく話が進めば、彼女との縁はもうすぐ切れる。
きっと彼女は、トップへの道を歩むだろう。その隣に、俺がいる必要はない。いてはいけないのだ。きっと、邪魔をしてしまう。
――四年前と同じことを、繰り返すわけにはいかないのだ。
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