7: ◆m03zzdT6fs[sage saga]
2013/06/12(水) 03:24:26.35 ID:XCXUAY/Ho
「零細プロダクションのPさん、ですか?」
『あ、あぁ。そこで、まあ、スカウトと事務員とトレーナーと社長とマネージャーを兼務してる。だからこうやって、声を掛けたわけなんだが』
俺は自分の担当している役柄をすべて並べ立てる。こう見れば、とても忙しいように見えるが、所詮は零細だ。仕事もなければアイドルもいないのである。
事実上平社員と何ら変わりはなかった。これも、少しでも彼女に興味を持ってもらうための、話術の一つだった。だますようで悪いとは思うが……。
「社長さん、ですかぁ」
彼女は首をかしげている。残念なことに、あまり効果は発揮しなかったらしい。これはゆゆしき事態である。しばらく話術なんてしてなかったから、なまっているのかもしれない。
何とかして興味を持ってもらわなければいけない。アイドルという職業を知ってもらえればきっと。ただ、その方法がない。
今の事務所での生活を始めて以来、最高の逸材を目の前にしている。もしかしたら、人生の中でも一、二を争うレベルかもしれない。
この子なら確実にトップになれる。まだ若造でしかないが、自分の目がそう言い張っている。逃してはならない。ただ、必死になってもならない。がっつくと、相手に不安感しか与えないからだ。
『と、とにかく、ええと、興味があったらでいいから、一度来てくれると嬉しい。なんなら今からでもいいんだが』
「えっと……」
『いや、今からなんて 信用はしてもらえてないだろうな。どうするか……。俺の連絡先を渡して話を、ああ、これじゃまるきりナンパじゃないか……』
「あの……」
『とりあえず、名前だけでも。あっと、まず一つ説明させてもらうと、これはナンパでもなんでもなくて、スカウト活動の一環で……』
「……ふふ」
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