過去ログ - フロイライン「不思議で優しい神父様」フィアンマ「……」
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12: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2013/06/13(木) 22:38:20.11 ID:PusaXlv20

一口、二口。

噛む度に、甘い味がする。
ほんのりと温かいのは、彼の手の温度が移ったか、あるいは焼いて間もないのか。
総合的に美味しいと判断し、フロイラインは黙々と食べていく。
全てを食べ終えたところで、どこか遠く、叫び声のようなものが聞こえた。
小首を傾げる彼女を見やり、フードを被った青年はこう問いかける。

「この村はもうすぐ燃え尽きる。…来るか?」
「…来る、とはどういった意味でしょう?」
「俺様についてくるか。それとも、この村の大火災で死ぬ事を夢見るか。
 どちらが良いか、選ばせてやる」

彼の言葉に、フロイラインは少しだけ思考時間を取った。
さて、ここに留まるのと、彼についていくのと、どちらが快適なのだろうか。

「行きます」

決断は、思いの他早かった。
彼女はパン屑を舌で舐めとり、彼を見つめる。
フードで顔は見えないが、彼についていけば"より快適"な気がしたのだ。
見えぬ布地の向こう、彼がうっすらと笑った気がする。

「そうか」

再び、手が差し出された。

彼女の人生において手が差し伸べられたのは、これが初めての事だった。


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